銀行・信用金庫から借入・融資を断られて資金繰りが苦しくなった時にまず行うこと
お金の残高にゆとりがある訳ではない中小企業にとって、銀行や信用金庫などからの借入れはとても重要ですよね。
いつも貸してくれてたから…
何年も問題なく貸してくれていたから…
しかし、業績が悪化したなどでアテにしていた金融機関に融資を断られたら一気に資金繰りが苦しくなります。
今回はそんな時、当たり前のことだけど大事なことをお伝えします。
銀行や信用金庫に融資を断られたときにまず行うこと
あてにしていた融資が断られると、資金繰りが急速に悪化しかねません。
融資を断られたときの経営者の心境はやるせなく、軽いパニック状態です。
「このままでは会社が潰れるのでは……」
「支払いができずに信用に傷をつけてしまうのでは……」
頭の中を悪い想像がぐるぐる、ぐるぐる……
断られてすぐは、こんな心境に陥って当然です。
お金が無くなる恐怖、会社の継続ができなくなるかもしれない恐怖は経営者の方なら持って当たり前でしょう。
しかし嘆いても解決しないので、すぐに次に向けて動き出す必要もあります。
まずは落ち着きましょう
断られたときはパニック状態でも、いつまでもパニック状態では正しい判断はできません。
まずは「落ち着くこと」これが大事です。
冷静になり、置かれた状況を受け入れて前に進む準備をはじめます。
自分なりの気持ちの切り替え方法があればいいですが、誰かに相談することも有効です。
相談することによって、だんだんと頭の中が整理され冷静さを取り戻していきます。
お金に関することなので相談する相手も限られるでしょうが、できるだけ銀行の事や資金繰り改善に詳しい人に相談をするほうが安心できるでしょう。
試算表、資金繰り表を使って現状を把握する
気持ちが落ち着いた次にすることは、現状を把握することです。
まず置かれている状況を客観的に把握することで、正しい判断ができるようにします。
客観的に把握するには試算表、資金繰り表を使います。
また、必要に応じて販売管理情報などを用います。
もし、試算表、資金繰り表がなければ早急に作成します。
この状況をどんぶり勘定で乗り越えようと思ってはいけません。
融資を断られたという事は、何かしら問題があったからです。その問題を解決するにも客観的な数字を用いて改善していきますので、数字の把握は不可欠となります。
資金繰り表を精査して、時間の猶予を把握する
今一度、資金繰り表を見直しして「いったい資金ショートまでどれだけの時間があるのか?」を把握することが一番にすることとなります。
このような状況であれば、資金繰り表も月繰りではなく日繰りで作成する方が望ましいでしょう。
また、明細も可能な限り細分化します。
得意先別の入金予定や支払先別の支払予定、引落しのある経費などを拾っていきます。
資金ショートまでの時間を知ることが、ここでの作業の目的です。
試算表の損益計算書を精査して、経費さを削減できないかを検討する
資金繰り表を精査したことで、資金ショートまでの時間の猶予を知ることができました。
次の作業は、この時間の猶予をいかに伸ばせるかを考えることです。
時間の猶予を伸ばす方法は、収入を増やす、支払いを減らす、資金を増やすの3つです。
しかし、収入を増やしてお金を回収するまでには時間がかかります。
即効性を期待するなら支払いを減らすことになります。
無駄な経費がないか、ゼロベースで考え支出を抑えます。
また、支払自体を延ばせないかの検討も併せて行います。
支払いの延ばす順番の考え方は、下記の記事を参考にしてください。
試算表の貸借対照表を精査して、回収漏れはないか、売却して資金化できないかを検討する
次は資金自体を増やす方法はないかを検討します。
まずは売掛金明細を見て、回収が遅れている債権はないかを確認します。
普段から回収までをキッチリと追いかけていればいいですが、そうでない場合、未回収の売掛金が残っている場合があります。
約束通りキッチリと支払っているかどうかを精査して、速やかに現金化させましょう。
また、必要のない資産が無いかを改めて考えます。
特に有価証券は換金性が高いので資金化には有効な手立てとなります。
有休不動産などを持っている場合は資金化に有効ですが、売却までにそれ相応の時間もかかります。
必要が無ければ売却に向けてすぐに取りかかるほうが良いでしょう。
また最近ではファクタリングを利用して資金調達も可能です。
ファクタリングとは簡単に言えば「売掛債権を入金前に譲渡して資金化する資金調達方法のこと」です。
ファクタリングには”2社間ファクタリング”と”3社間ファクタリング”があります。
2社間ファクタリングの場合、売掛先への通知がありませんので信用にも傷がつきません。
保険の貸付制度を活用する
簿外資産でもある、保険による貸付制度を利用することで資金調達が可能となります。
「貸付制度」となっていますが、要はこれまで支払って積み立てられている保険金を担保にお金を借りることです。
どの保険会社でも取り扱っていますので、もし利用できるようであれば活用しましょう。
一般の保険金以外にも、小規模共済や経営セーフティ共済でも貸付制度があります。
こちらも積立金を担保として、その範囲内での借入となります。
保険を解約して返戻り金を受取ることも可能です。
その場合、掛けた年数によって損をすることもありますが、手元資金を増やすほうが優先される場合は解約も検討します。
ただし、戻ってきた保険金は益金として取り扱われます。
ですので、繰越欠損金が無く利益が出てしまった場合には課税されますので注意が必要です。
基本的には、まずは貸付制度の活用から考えるのが良いでしょう。
リスケ(返済猶予)を依頼して借入金の返済額を減らす
どこの金融機関も貸してくれないようであれば、リスケ(返済猶予)を行い支出を止めます。
リスケによるデメリットは債権者区分が下がり、新たな融資を受けれないことですが、すでに融資を受けれていないのであればデメリットになりません。
ただし、一度リスケを受けて正常化に戻ったとしてもすぐには融資を受けることができないので注意が必要です。
ただ、資金繰りを改善させる方法としては最も効果が高いのは借入金の返済をリスケ(返済猶予)してもらうことです。
現在ではリスケに応じてもらいやすい環境ですが、しっかりとした経営改善計画をもとに行わないと意味がありません。
ひとまずリスケのお願いをして、経営改善計画書を作成しましょう。
時間を確保出来たら経営改善に着手
資金ショートまでの時間を確保出来たら、いよいよ経営改善に着手しましょう。
基本的には収入を増やさなければ状況はいつまでたっても好転しませんので、腰を据えて取り組むことになります。
経営はマーケティングや生産管理、組織についてなど様々な要因が相互に関係していますので、どのような効果があって、どのようなリスクがあるのかなどを一つ一つ考えながら施策を考えます。
戦略レベルで考える必要がありますので、全体を俯瞰しながら考えましょう。
まとめ
銀行や信用金庫に融資を断られても、まずは落ち着いくことが先決です。
冷静になり、客観的に状況を把握しながら施策を考えます。
そして、資金繰り表で資金ショートまでの時間の猶予を確認しながら、支払を減らしたり資産を資金化しながら資金ショートを回避させます。
最後に、経営改善に取組み、別の金融機関からも融資を受けれる状態まで持っていくことが必要です。
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末信 公平
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