平成30年度第2次補正予算「事業承継補助金」の公募発表
平成30年度第2次補正予算「事業承継補助金」の公募が2019年4月12日金曜から開始されます。
事業承継に絡む事業者であれば、使える経費項目も多く、使い勝手の良い補助金です。
どのような補助金なのか見ていくことにしましょう。
ご注意
当事務所の記事は予測や個人的見解を含みます。
当事務所の記事に基づいて全てを判断せず、募集要領は必ずご自身でお読みになり確認してください。
また、採択されなかった場合でも当事務所では一切の責任を負うことはできません。
当事務所の記事に記載されている情報や見解は、予告なしに変更することがあります。
事業承継やM&Aをきっかけとした新しいチャレンジを応援する補助金
事業承継補助金とは何なのか?
募集要領の事業の目的に書かれてあります。
後継者不在等により、事業継続が困難になることが見込まれている中小企業者等が、経営者の交代や、事業再編・事業統合を契機とした経営革新等を行う場合に、その取組に要する経費の一部を補助することにより、中小企業者等の世代交代を通じた我が国経済の活性化を図ることを目的とします。
(参照:募集要領 事業の目的より)
難しく書いていますが、簡単に言えば「事業承継をきっかけとして新しい取り組みを応援します」という事です。
計画書を作成する場合は、この国の目的に沿った計画書にする必要があるので、決して軽視してはいけません。
募集期間
現時点で発表されているのは、
2019年4月12日(金)~2019年5月31日(金)19:00
の50日間です。
19:00となっているのは、今回の応募は原則電子申請のみだからですね。
ちなみにこの補助金、昨年は3次募集までありました。
昨年度は
第一次募集:2018年4月27日~6月8日
第二次募集:2018年7月3日~8月18日
第三次募集:2018年9月3日~9月26日(Ⅰ型のみ)
この補助金の出所は「事業承継・世代交代集中支援事業」になるのですが、予算額が昨年と同額の50億円になっています。
応募者数、採択数共に昨年並みだと、2次募集、3次募集まであるかもしれません。
Ⅰ型:後継者承継支援型 Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型
事業承継補助金には二つの種類があります。
一つはⅠ型と呼ばれる「後継者支援型」、もう一つはⅡ型と呼ばれる「事業再編・事業統合支援型」
跡継ぎに任せるか、合併や譲渡などで事業を継続させるかの違いです。
Ⅰ型:後継者承継支援型 | Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型 |
日本国内で事業を営む、中小企業・小規模事業者等、個人事業主、特定非営利活動法人であること | 本補助金の対象事業となる事業再編・事業統合に関わる”すべての被承継者”と”承継者”が、日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者等、個人事業主、特定非営利活動法人であること |
地域経済に貢献している中小企業者等であること | 地域経済に貢献している中小企業者等であること |
承継者が、次のいずれかを満たす(事業)者であること
・経営経験がある |
承継者が現在経営を行っていない、又は、事業を営んでいない場合、次のいずれかを満たすものであること
・経営経験がある |
補助率・補助上限
補助率・補助上限もⅠ型、Ⅱ型で異なります。
また、事業所や既存事業の廃止などの事業整理、事業転換の場合は補助額が増額される点は、他の補助金と異なります。
国も「儲からない事業にしがみつかずに、事業承継を機に新しいことにチャレンジして欲しい」とのメッセージを感じます。
Ⅰ型:後継者承継支援型
補助率 | 補助上限 | 上乗せ額 |
2/3以内 (小規模事業者) |
100万円以上~200万円以内 | +300万円以内 |
1/2以内 | 100万円以上~150万円以内 | +225万円以内 |
事業所や既存事業の廃止等の事業整理(事業転換)を伴う場合補助額を上乗せされます
Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型
補助率 | 補助上限 | 上乗せ額 |
2/3以内 (審査結果上位) |
100万円以上~600万円以内 | +600万円以内 |
1/2以内 | 100万円以上~450万円以内 | +450万円以内 |
事業所や既存事業の廃止等の事業整理(事業転換)を伴う場合補助額を上乗せされます
事業承継の要件
事業承継とはいったいどのような事を指すのかの要件定義がなされています。
公募要領のP.7に記載されています。
本補助事業の対象となる事業承継は、2016 年 4 月 1 日から補助対象事業期間完了日または、2019 年 12 月 31 日のいずれか早い日までに、中小企業者等間における事業を引き継がせる者(以下「被承継者」という。)と事業を引き継ぐ者(以下「承継者」という。)の間でM&A等も含む事業の引き継ぎを行った又は行うこととし、6.2 で定める形態を対象とする。
なお、承継者と被承継者による実質的な事業承継が行われていない(例:グループ内の事業再編)又は承継者側に承継前に事業を経営していた実態がない(Ⅱ型に限る。)と事務局が判断した場合、審査において評価に反映する場合があるので留意すること。(参照:公募要領 事業承継の要件より)
ここで注目したいのは、「2016 年 4 月 1 日から補助対象事業期間完了日または、2019 年 12 月 31 日のいずれか早い日までに、中小企業者等間における事業を引き継がせる者と事業を引き継ぐ者の間でM&A等も含む事業の引き継ぎを行った又は行うこと」の部分です。
これから事業承継を行う場合だけでなく、3年前に事業承継を行った場合も対象となる点がポイントです。
補助対象事業
次に、どのような取り組みに対して補助金を出すのかが規定されています。
いくら素晴らしい計画書でも、規定を外してしまったら審査対象外です。しっかりと確認をしましょう。
後継者不在等により、事業継続が困難になることが見込まれている中小企業者等において、経営者の交代又は事業再編・事業統合を契機とした承継者が行なう経営革新等に係る取組を補助対象とする。
(1) 中小企業者等である被承継者から事業を引き継いだ中小企業者等である承継者による経営革新等に係る取組であること。
(2) 補助対象事業は、以下に例示する内容を伴うものであり、補助対象事業期間を通じた事業計画の実行支援について、認定経営革新等支援機関の記名・押印がある確認書により確認される事業であること。
① 新商品の開発又は生産
② 新役務の開発又は提供
③ 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
④ 役務の新たな提供の方式の導入
⑤ 上記によらず、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組、事業転換による新分野への進出 等
(3) 補助対象事業は、以下のいずれにも合致しないこと。
① 公序良俗に反する事業
② 公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 121 号)第 2 条において規定される各営業を含む)(参照:公募要領 補助対象事業より)
求められているのは、経営革新等並みの新しい取り組みです。
経営革新とは何かというのが、上記に示されている(2)になります。
新しいものを作ったり、サービスを開発すること、新しい作り方や販売方式を導入すること、となります。
また、販路拡大や新市場開拓、生産性向上などで事業が活性化すればOKともなっています。
新しい取り組みの部分ですが、自社の商圏範囲で良いと考えます。何も日本初とかでなくても大丈夫です。
どのような取り組みだと認められたのかは、事業承継補助金の事例集を参考にしてみてください。
その他、経営革新の事例も参考になると思います
ページ中段に事例集がPDFファイルであります
補助対象経費
補助対象経費は下記になります。
ものづくり補助金と違い、かなり幅広く認められています。
費目名 | 概要 |
Ⅰ.事業費 | |
人件費 | 本補助事業に直接従事する従業員に対する賃金及び法定福利費 |
店舗等借入費 | 国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料 |
設備費 | 国内の店舗・事務所の工事、国内で使用する機械器具等調達費用 |
原材料費 | 試供品・サンプル品の製作に係る経費(原材料費) |
知的財産権等関連経費 | 本補助事業実施における特許権等取得に要する弁理士費用 |
謝金 | 本補助事業実施のために謝金として依頼した専門家等に支払う経費 |
旅費 | 販路開拓を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費 |
マーケティング調査費 | 自社で行うマーケティング調査に係る費用 |
広報費 | 自社で行う広報に係る費用 |
会場借料費 | 販路開拓や広報活動に係る説明会等での一時的な会場借料費 |
外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費 |
委託費 | 業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費 |
Ⅱ.廃業費 | |
廃業登記費 | 廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費 |
在庫処分費 | 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費 |
解体・処分費 | 既存事業の廃止に伴う設備の解体・処分費 |
原状回復費 | 借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用 |
移転・移設費用(Ⅱ型のみ計上可) | 効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費 |
※人件費、店舗等借入費、設備リース費・レンタル料及び広報費の展示会等の出展申込みについて、交付決定日より前の契約であっても、交付決定日以降に支払った補助事業期間分の費用は、例外的に対象とする。
事業期間
事業期間とは、計画が認められた後、いつまでに実行してお金の支払いを終える必要がある期間です。
交付決定日から2019年12月31日
までに完了させておく必要があります。
1次募集の場合だと、交付決定から終了まで半年ほどあります。長いようで意外と短いので、ゆとりをもって事業に取組みましょう。
補助金交付までの流れ
実際の流れとしては、
①認定支援機関へ相談
②計画書作成
③交付申請
まででひと段落です。
認定支援機関へ相談は、確認書の添付が必要となっているからです。ちなみに当事務所も認定支援機関です。
事務局から交付決定通知が来たら
④補助事業の実施
⑤事業実績報告
を行います。
確定検査を経て補助金額の確定となった段階で
⑥補助金交付の手続き
を行います。
そして2~3か月後に補助金が入金されます。
補助金交付後の補助対象者の義務
補助金を受けたらそれで終わりではなく、報告や管理の義務があります。
(1) 事業化状況報告
補助事業完了後、5 年間、当該事業についての事業化状況を事務局へ報告すること。(2) 収益状況報告
補助事業完了後、5 年間、補助事業に対する収益状況を示す資料を作成すること。その資料にて一定以上の収益が認められた場合には、事務局に報告し、精査の結果、交付した補助金の額を上限として収益の一部を納付すること。(3) 取得財産の管理等
補助事業において取得した財産については善良なる管理者の注意をもって適切に管理していただきます。(4) 補助事業の経理
補助事業に係る経理について、帳簿や支出の根拠となる証拠書類については、事業が完了した年度の終了後5年間、管理・保存しなければなりません。(5) 立入検査
本事業の進捗状況確認のため、事務局が実地検査に入る場合があります。また、本事業終了後、会計検査院等が実地検査に入ることがあります。(参照:公募要領より一部抜粋)
5年間の報告義務が生じ、利益が出た場合は補助金を返さなくてはなりません。
もらったお金で収益を生んだらお金を返すってところがイマイチ腑に落ちませんが、返す必要があります。
返す必要が生じる場合は、収益(利益)から補助対象経費を差し引いてた部分になります。
計算式は下記となっています。
(補助事業に係る収益額-補助対象経費)×補助金交付額÷補助事業に係る支出額
まとめ
内容的には革新性を持ち出されているので難易度は高まりますが、幅広い経費が認められているのでやる気のある事業者にとってはとても良い補助金です。
昨年の採択率も結構高く、要件に当てはまれば狙い目の補助金なので、ぜひ検討してみましょう。
こちらの記事もおすすめです
末信 公平
最新記事 by 末信 公平 (全て見る)
- 中小企業診断士1次試験7科目まとめて受験のメリット - 2022-03-29
- 経営データは鮮度が大事 2カ月遅れの試算表では活用しづらい - 2022-03-09
- 資格は使いよう 役に立つか立たないかはその人次第 - 2022-03-01