売上を上げるため自社の売上構成を分解する
資金繰りを改善させるためには、売上を上げる施策を外すことはできません。
いくら経費を削減しても、借入金の返済をストップさせても、最終的には売り上げを上げなければ資金繰り改善の根本的解決にはなりません。
「それができれば苦労はしない」と言われそうですが、一つ一つ資金繰りを改善するためには何をすべきかを考えていきましょう。
売上を上げる方法を知るために、まずは自社の売上構成を分解
まず初めにすることは自社の売上構成を知ることです。
資金繰りが苦しい会社のほとんどは、売上の分析を行ってませんでした。
「自社で売上が一番多い商品は?サービスは?二番目は?三番目は?」
「利益を稼いでいる商品は?サービスは?」
「どれだけの取引数をこなしている?」
などなど分析アプローチは色々ありますが、最低でも
①得意先別の売り上げ・利益の順位
②商品販売(サービス)の売上数、金額の順位
は確認しましょう。
また、売上は
「売上=客数×客単価」
「客数=既存客+新規客-流出客」
「客単価=商品単価×買上点数」
「客単価=1回当たり購買金額×購買回数」
と分解できます。
まずは過去の実績はどうだったのかを分解して数値化させていきます。
するとこれまで感覚で捉えていたものが客観的な数値として出ます。多くの会社では分析すらしていないので、新たな発見につながります。
客観的に分かった資料を基に、今後どのようにして売り上げを増やしていくのかを考えます。
顧客の流出を防ぐ
一番簡単な方法は、顧客の流出を防ぐことです。
売上を得るために新規開拓に力を入れている姿はよく見ますが、新規客を獲得するまでのコストは既存客の流出を防ぐより高くかかります。
また、関係性を一から築いていくことになるので成果が出るまで時間がかかります。
なのでまずは、既存顧客の流出を防ぐことを一番に考えましょう。
客単価を上げることは容易ではない
ちまたでは”高付加価値化による高額商品の販売”と言われますが、そうそう簡単に出来るものではありません。
そこまでにたどり着く道のりは長くコストもかかります。
長期的視点に立った取り組みとしては良いですが、資金繰りが苦しい会社がすぐに取り組むことかと言われれば、優先順位は下がります。
既存顧客に新たな商品やサービスを提供する
売上が立つまでのプロセスで一番困難なことは、信頼関係を築くまでに時間がかかることです。
その点、既存顧客であれば最低限の信頼関係は築けていると言えます。
相手の事もわかってるし、相手の事も自社の事を知ってくれている。
そんな既存顧客に新たな商品の購入やサービスを提供することで、購買回数を増やすことができます。
営業は手数に勝るものはない
売上を上げるための営業活動で、どうしても「効率的にできないか?」を考えると思います。
資金繰りに困っていなければ効率的な方法を考えることにエネルギーを使ってもいいでしょう。
しかし、資金繰りに困っている会社であれば効率的はひとまず横に置いておいて、手数を増やすことに徹するべきです。
では手数を増やすとはどういうことか?
それは、「訪問回数を増やすこと」「提案数を増やすこと」です。
往々にして業績が悪い会社は手数が少ないです。
行きやすい顧客のところばかりに行っていたり、顧客からの注文をひたすら待ってたりしていることが多いです。
顧客の困りごとを探してくる
まずすることは沢山の顧客のところに訪問をして、しっかりとした関係性を築くこと。
次に「提供できるものは何か?」のヒントを拾ってくること。
よほど優れた商品を扱っていない限り、顧客は他社と比較して購買行動に移します。
同じ商品であれば、安いもの、気に入った会社(営業マン)から買うことになるので、関係性を築くのが勝負。
値引き勝負に持ち込まれると資金繰りに苦しい会社は勝ち目がないので、関係性を築くことに注力します。
顧客と関係性が築けだすと、色々な情報を得れるようになります。
その時に、顧客が困っていることを解決できる商品やサービスを提供できれば、「お、いつもと違うな」「うちの事を考えてくれてるな」となり風向きも変わってきます。
何回も提案を繰り返し信頼を勝ち取れば、より強固な関係性が築けますのでおのずと結果につながってきます。
現金化までの期間が短いものを提供する
ここで注意すべきことは、現金化までが短いものを提供することです。
潤沢な資金があれば、いつでも借り入れができる状況であれば問題ないですが資金繰りが苦しい場合は、いかに現金化までの期間が短いかが重要になります。
もしくは、買掛金の支払いを遅らせ売掛金の回収を早めることができないか検討しましょう。
売上ばかりに目がいっていると資金繰りがおろそかになり、支払ばかりが先行して売れたはいいが現金化まで時間がかかって資金繰りがショートしてしますこともあり得ます。
黒字倒産のパターンはこの、入金と出金のタイミングがうまくいかなくなり発生します。
つなぎ融資を受ける
ただし、売上が上がって入金までの期間があり資金繰りが苦しい場合は、短期のつなぎ融資を受けることができるかもしれません。一度、金融機関に相談してみましょう。
スムーズに融資を受けることができるように、金融機関の支店長や営業担当上席と連絡を日ごろから取り合っておくことをお勧めします。
「○○の取り組みをしています。売上が上がった場合は仕入資金の支払いで資金繰りが苦しくなるかもしれませんので、その時には✕✕くらいの短期融資をお願いしたいですが大丈夫でしょうか?」
と日ごろから情報交換しておいてください。
前向きに考えてくれる金融機関であれば「それでは✕✕の資料をお願いします」と何らかの提案を受けます。それすらないような金融機関は期待できませんので、他の金融機関を探しておきましょう。
まとめ
資金繰りの改善には、根本的に業績回復が必要です。
経費の削減やリスケによる返済額の減額は一時しのぎ策です。
経営改善にむけ、資金繰りに困っている企業はまず何をすべきかを考え、適切に打ち手を繰り出していく必要があります。
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末信 公平
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