生産性を高めるため工程の全体像を考えてコスト削減
ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金(ものづくり補助金)の公募が始まりました。
この補助金の目的はざっくりと言って「生産性の向上」です。
生産性の向上は全体を考えて行う
生産性の向上という事なので、少ない労力で多くの価値を生むと言ったところです。
ものづくり補助金における生産性の考えとして、わかりやすく言えば「新しい機械を導入して沢山のモノを作る」です。
ザ・ゴール~成約理論(TOC)~
「ザ・ゴール」という書籍をご存知でしょうか?
マンガ版もあります(とっつきやすいのでこちらもお勧めです)
著者のエリヤフ・ゴールドラット博士がトヨタ生産方式をベースに製造業向けに成約理論を説いた本です。
アメリカでの出版は1984年と30年以上前ですが、日本での出版は2001年です。
邦訳が17年と遅れた理由は、当時(1980年代前半)の日本企業の国際競争力が抜きん出ており、「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一級だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」と著者が邦訳の出版を拒否したことによります。
日本でこの本が出版されたころ、社長に勧められて読んだのが最初でした。初めて読んだ頃はまだ20代半ばでしたが、ボトルネックと言う概念は新鮮で、私の考えのベースにあります。
中小企業診断士の勉強を始めて、工場の生産管理をわかりやすく理解するため、マンガ版で復習しました。
ボトルネック工程を探す
この本の肝の部分は「ボトルネックに合わせた生産スピード」「ボトルネックの解消」「最低ロットを下げる」ことです。
ボトルネックとは、
1 物事の進行の妨げとなるもの。難関。隘路(あいろ)。ネック。
2 道路で、いつも混雑するところ。車線の減少箇所や開かずの踏切など。
3 コンピューターやネットワークの高速化などの性能向上を阻む要因。(出典:デジタル大辞泉)
となっています。
ボトルネックとは要するに、妨げている部分という事です。
この妨げている部分以上にはスピードがあがらないので、それ以外の工程をいくら頑張っても無駄という事です。
例えば、上記の2の例で、A地点からB地点の間に開かずの踏切があったとします。
A地点からB地点に移動する車の量を増やそうとした場合を考えてみます。
A地点から踏切までの道と踏切からB地点の道をいくら広げたり制限速度を上げたところで、A地点からB地点にたどり着く車の量は増えません。(実際には多少は増えるかもしれませんが・・・)
踏切の開いている時間が制約条件だからです。
これがボトルネック部分です。
余談ですが、ボトルネックの考えは工場の生産に関わらず、事務処理であったり、団体での移動であったりと様々な部分で応用できる考え方です。
ボトルネックの解消はなぜ必要なのか
ボトルネック解消の大きな理由は、仕掛品を無くし無駄なキャッシュアウトを削減させることです。
ボトルネックとなっている工程の前工程はいくら頑張って仕掛品を作っても全くの無駄です。
人件費もかかりますし、原材料費もかかります。その分、キャシュアウトしてしまいます。
また、ボトルネック工程の後工程も手待ち時間などによる人件費の無駄遣いが発生したりします。
原価計算上は人件費も原材料費も仕掛品として資産計上されるのでわかりにくいですが、かかった費用はその分資金流出していますので資金繰りが苦しくなってしまいます。
ボトルネックに合わせた生産はそれだけでキャッシュフローを改善させる効果があります。
生産性を上げるにはボトルネック工程を改善することが一番の近道と言えます。
成約理論の考え方で収益改善
他にも成約理論の考え方を導入することで収益改善が図れます。
1つは機会損失の回避です。
ボトルネックを工程の生産量を増強させるることで、時間当たりの生産量が増えます。
また、最適なロットサイズで生産することで納品までのリードタイムを短縮させることです。
これまでは捌ききれなかった注文も対応することができ、売上の増加が見込めます。
2つ目は効率化による収益の改善です。
時間当たりの生産量が増えることはそれだけ効率よく生産できていることなので、原価率が下がります。
その分収益が改善されます。
ボトルネックの解消に役立つ機械が最優先
以上の事より、ある工程の機械だけを最新式に変えても意味がないということがお分かりいただけたと思います。
最優先に取組むことは、ボトルネックとなっている工程の生産能力を向上させてあげることです。
ボトルネック工程の生産能力を上げれば、現時点より全体として生産性が高まります。
ものづくり補助金の活用は、そのようなボトルネック工程の解消につながる機械の導入が良いと考えます。
まとめ
生産性の向上で一番わかりやすいのは、時間当たりの生産量を増やすことです。
そのためには工程管理を行い、どこがボトルネックとなっているかを調べる必要があります。
ものづくり補助金は金額も大きな補助金です。
しっかりと次につながる機械を導入して、経営基盤の強化を果たしていただければと思います。
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末信 公平
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