経営改善計画で必ず意識すべき3つの数値基準 【経営改善計画書作成-19<数値計画-①>】

前回は経営を改善するための具体的施策であるアクションプランのお話をしました。
今回からは、施策を数値に落とし込んだ数値計画作成のお話をいたします。
経営改善計画で必ず意識すべき3つの数値基準
経営改善計画を作成するにあたり、必ず意識すべき3つの数値基準があります。
金融機関の合意を得るために、金融機関マニュアルにおける債務者区分要件緩和の計画基準を満たすことが望ましいからです。
※債権者区分に関しては「債務者区分について」の記事をご確認ください。
3つの数値基準
金融機関の合意を得るために抑えておく3つの数値基準は
- 経常黒字化3年以内
- 5年(から10年)内に実質債務超過解消
- 計画終了時(債務超過解消時)に借入金償還年数がおおむね10年
となります。
これらの基準は絶対的なものではありませんが、金融機関は目安にしています。
金融機関ごとに違いはあると思いますが、基本的には上記の数値を参考にしてください。
ちなみに金融機関にリスケを丸投げで依頼されると、上記に当てはまるように数字を合わせてきます。
それが実現できるかどうかは別として、経費削減策を中心に作成されてしまいます。
経常黒字化3年以内
リスケの依頼を行う時点で経常利益がマイナスの場合、経営改善計画では3年以内に経常利益をプラスにする必要があります。
5年(から10年)内に実質債務超過解消
リスケの依頼を行う時点で実質的に債務超過の場合、基本は5年以内に実質的な債務超過を解消する必要があります。
中小企業の場合は10年でも認めてもらえる場合もあります。
実質的というのは、実態に即したバランスシート(貸借対照表)を基にした上でのこととなります。粉飾や実態とずれた計上をしているバランスシート(貸借対照表)を正しく直した後という意味です。
計画終了時(債務超過解消時)に借入金償還年数がおおむね10年
債務超過が解消された時点で、要償還債務を毎年計上できるキャッシュフローで割った場合におおむね10年以下となる必要があります。
要償還債務とは、金融機関に返済する有利子負債から正常運転資金、現預金、換金性ある資産(有価証券など)を差し引いた額になります。
おおむね10年なので、金融機関によってはもう少し緩く見てもらえる場合もあります。
数値の根拠となっている2つの計画
この意識すべき3つの計画の根拠は、金融検査マニュアルにおける「実抜計画」「合実計画」と呼ばれる2つの計画が基となっています。
「実抜計画」「合実計画」を作成すると、債権者区分を引き上げてみなせる要件になっています。
実抜計画
- 実現可能性の高い抜本的な経営再建計画
- 貸出要件緩和債権の卒業基準
- 要管理先→その他要注意先
合実計画
- 合理的かつ実現可能性の高い計画
- 破綻懸念先→要注意先(要管理含む)
まとめ
経営改善計画で必ず意識すべき3つの数値基準があり、それは「経常黒字化3年以内」「5年(から10年)内に実質債務超過解消」「計画終了時(債務超過解消時)に借入金償還年数がおおむね10年」です。
数字に縛られ過ぎる必要はありませんが、金融機関はこの数字を基準としています。
数字ありきで計画を作ると、ほとんどがうまくいきません。
あくまでも、窮境原因の除去策から導き出された施策をベースにしてください。
その後実際に数値計画を作成した時に、この条件におおよそ当てはまっているのかを確認しましょう。
【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成】シリーズ
次回 予想財務諸表を作成する 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-20<数値計画-2>】
前回 具体的な対策を考える 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-18<アクションプラン>】
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末信 公平

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