企業主導型保育園は2020年度までに6万人分確保の予定
企業主導型保育園は2020年度まで募集予定
企業主導型保育園事業は2020年まで募集が実施されそうです。
松山政司少子化対策担当相は11日の記者会見で、待機児童の解消に向け、保育の受け皿として整備している「企業主導型保育所」について、本年度の企業からの応募が5万人分を超えたと明らかにした。内閣府は本年度の整備計画を当初より1万人分上積みし、年度末までに3万人分を確保する。
2016年度に創設された企業主導型は企業が自社の従業員向けに設置する施設。認可外だが、整備費や運営費などで認可施設並みの助成が受けられる。17年度末までに約6万人分が整備され、政府は18~20年度の3年間でさらに6万人分を確保する予定だ。
松山氏は「制度の周知が進み、企業側のニーズが高まっている」と話した。
(出典 産経ニュース 2018.9.11)
2018年度の応募は5万人分
2018年度の企業主導型保育園の応募数は整備予定3万人(当初2万人+追加1万人)に対し、5万人分を超えています。
過去2年実施され、認知度が上がったことで数多くの企業が応募されました。
当事務所にもいくつかのお問合せを頂きましたので、関心の高さがうかがえます。
倍率は1.6倍と、応募すれば採択されたこれまでの状況から変化しています。
2020年まで募集は継続
”政府は18~20年度の3年間でさらに6万人分を確保する予定”としていますので、2019年度、2020年度の2年間は企業主導型保育園事業の募集が継続しそうです。
政権が変わればどうなるかはわかりません。しかし、自民党の総裁選挙で安倍晋三首相が3選を果たしたので大きく方針は変わらないと考えます。
企業主導型保育園の運営実績も明らかとなっており、応募のノウハウも蓄積されてきましたので今後も応募する企業数は減ることはないでしょう。
園児の確保、保育士の確保がカギ
西日本新聞の記事では、定員の半数にも届いていない保育園のことが記事になっていました。
福岡市内の企業主導型保育園は計85園。定員1981人に対し利用者は1030人にとどまる(8月1日現在)。他の大都市圏も同様で、大阪市は96園(定員1714人)に888人▽横浜市は47園(同1014人)に398人▽名古屋市は33園(同514人)に約300人-となっている。
(出典 西日本新聞 2018.9.17)
待機児童が多いとされている大都市圏でも実際は定員の40%~60%となっています。
これには3つの要因があると考えます。
まず一つ目は、従業員枠の園児が定員の半数程度しかいない。
企業主導型保育園は定員の半数は従業員(提携先の従業員)の園児である必要があります。
逆に言えば、定員の全てを従業員枠の園児で確保できなければ、残りの定員を地域枠で満たす必要があります。
企業主導型保育園はそもそも従業員の子供を保育することが基本です。自社だけで確保できなければ提携先を探す必要があります。
従業員枠の園児で定員に達せなかったことが原因と考えます。
二つ目は、保護者は認可保育園に預けたい。
保護者が自分の子供を預ける優先順位は認可保育園が一番になります。
例え利用料金が同じでも、そのように考える人が大半です。
なぜなら、大事な我が子は安心できるところに預けたいから、失敗できないから、です。
企業主導型保育園は開園して長くても2年目です。多くは昨年度募集での開園なので実質1年目です。
聞いたこともない保育園、しかも扱いは認可外。いくら認可保育園並み、内閣府主導と言っても不安は不安です。
優先順位が相対的に下がるため、地域枠で預けようと思う保護者の絶対数が足りなくなっているからです。
この問題は、地道に信用と信頼を積み重ねるしかありません。
自社の保育園を知ってもらう、取り組み内容を理解してもらう。そして選んでもらう。
一般的な事業活動と同じことを行う必要があります。
三つ目は、保育士が確保できていない。
これは推測の部分が大きいですが、定員に対して必要な保育士が確保できなかったのではないかと思います。
園児の確保と同様に保育士の確保は容易ではありません。
フルタイムでの保育士の確保も大変ですが、朝夕だけの勤務と言ったパートタイムでの保育士の確保も簡単ではありません。
保育園は、預かる園児の数に対して必要な保育士の人数が国に決められています。
また、保育園は7時ごろから19時ごろまでと、開園時間が12時間のところが多いと思います。
1日の労働時間は8時間となっていますので、フルタイムの保育士が朝の7時から晩の19時まで勤務することは基本的にできません。
全員が全員フルタイムで雇用できればいいのですが、保護者からの保育人助成金だけではなかなか難しいのが実情です。
そのため、必要な時間に必要な人員を配置するためパートタイムでの雇用となるのですが、朝夕勤務可能な保育士が不足するなど人材確保の面が問題となります。
このように、安定した運営のカギは保育園児の確保と保育士の確保両方が必要となるのです。
安易な保育園運営は反対
企業が事業の成長のため、継続のために従業員を確保することが必須となっています。
そのため企業主導型保育園は有効な手段と考えます。
しかしながら、安易に保育園を運営することには反対です。
0~5歳児の子供を預かることは、大変な責任を負います。
その自覚無しに保育園を運営することは子供を不幸にしかねません。
企業主導型保育園事業で大儲けすることはできません。
単に儲けたいから、流行りだからやってみるといった考えでは上手くいきません。
従業員枠で定員を満たすことができなければ地域枠で園児を確保する必要があります。
そこには地道な取組による信用の蓄積が必要となります。
上手くいかなかったから簡単にやめることはできないのです。
しかし、それらを乗り越えて運営できる企業は有能な人財の確保ができますし、地域での認知度やブランド力が上がり、企業価値が高まります。
まとめ
企業主導型保育園は、後2年は募集が続きそうです。
しかし、先行企業の中には苦労しているところもあります。
安定した運営をするには園児の確保が必須です。
可能な限り従業員枠で園児を確保できるように、自社だけでは無理であれば共同利用で園児を確保できるようにすると後々楽になります。
もし現時点で来年の募集に応募しようと考えているなら、まずは地域枠に頼らずに従業員枠で園児を確保できるように動かれることをお勧めします。
また、保育士の確保できるルートづくりも必要です。
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末信 公平
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