「早期経営改善計画策定支援」を利用して早めに手を打つ
「早期経営改善計画策定支援」を有効に活用する
早期経営改善計画策定支援とは
早期経営改善計画策定支援事業はご存知ですか?
中小企業・小規模事業者の経営改善への意識を高め、早期からの対応を促すため、認定支援機関による経営改善計画策定支援事業のスキームを活用し、中小企業・小規模事業者者等が基本的な内容の経営改善(早期経営改善計画の策定)に取り組むことにより、平常時から資金繰り管理や採算管理が行えるよう支援を行います。
(参照:中小企業庁HPより)
事業概要は、
本事業は、資金繰り管理や採算管理などのより基本的な内容の経営改善の取組を必要とする中小企業・小規模事業者を対象として、認定支援機関が資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図などの早期の経営改善計画の策定を支援し、計画を金融機関に提出することを端緒にして自己の経営を見直し、早期の経営改善を促すものです。早期経営改善計画策定支援に要する計画策定費用及びモニタリング費用の総額について、経営改善支援センターが、3分の2(上限20万円)を負担するものです。
(参照:中小企業庁HPより)
となっています。
簡単に言うと、国が認めた専門家(認定経営革新等支援機関)が事業計画書を作成するのに、補助金を出しますよって事業です。
認定経営革新等支援機関に関しては、こちらの記事を参照ください。
国の意向とすれば、
「しっかりと計画を作成して事業を営んでくださいね。そしたら経営難に陥ることも少なくなるでしょう。自社でできなければ専門家に支払うお金を一部負担してあげるので計画作成してくださいね。」
ということです。
実際には、計画書があれば経営難にならないってものでもありませんが、あるに越したことはありません。
補助率
補助率:2/3
上限20万円
なので、お客様の実質費用負担は10万円になります。
平成30年8月1日以降の申請からは、認定支援機関へ支払う事業者負担額の支払い方法は、「振込」に限定されます。
また、支払申請時に添付する事業者負担額の支払証憑類を、振込受付書、払込取扱票等となります。
これまでは領収書でOKだったのですが、不正に補助金を受給するケースが多かったためと思われます。
国としてもあくまで、10万円の負担ができる事業者に対して支援をするということです。
対象事業者
中小企業、小規模事業者
中小企業者の定義は下記の条件にどちらか当てはまる企業となります。
例えばサービス業なら、資本金・出資の総額が5千万円以下、もしくは、常時使用する従業員数が100人以下なら該当します。
業種分類 | 資本金・出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
中小企業者の定義は下記の条件に当てはまる事業者となります。
業種分類 | 従業員数 |
製造業・その他 | 20人以下 |
商業・サービス業 | 5人以下 |
その他、個人開業医、医療法人、介護事業者も含まれます。
※社会福祉法人、LLP(有限責任事業組合)、学校法人などは対象外です。そのた支援対象外の業種もあるため個別問合せ。
利用回数
現在のところ1回だけです。
複数回利用は認められていません。
また、経営改善支援センターを活用した経営改善計画策定・実施中、または、中小企業再生支援事業を活用した事業再生計画を策定・実施中も対象となりません。
ですので、利用する際は十分に注意をして、最も価値がある場面で利用しましょう。
顧問税理士から勧められるがままに利用するのはもったいないですよ。
必要書類
早期経営改善計画策定には、下記7つの書類が必要になります。
記入書類
- 経営改善支援センター事業(早期経営改善計画策定支援)利用申請書 別紙①
- 申請者の概要(早期経営改善計画策定支援) 別紙①-1
- 業務別見積明細書(早期経営改善計画策定支援) 別紙①-2
添付書類
- 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本) 原本<事業者が準備>
- 認定支援機関であることを証する認定通知書 写し<認定支援機関が準備>
- 認定支援機関ごとの見積書及び単価表 自由書式<認定支援機関が準備>
- 金融機関の事前相談書 自由様式(原本)<事業者or認定支援機関が金融機関が準備して金融機関に押印をもらう>
ここで注意すべきは「金融機関の事前相談書」になります。
この事業の目的は、「金融機関と協力して経営改善を進めましょう。」となっています。なので、計画書の提出先は金融機関になります。
そのために、金融機関の事前相談書を申請時に添付する必要があるのです。
ただし、計画書を出したからと言って、金融機関が必ず新規融資やリスケなどの支援を行うものではありません。
「相談を受けましたよ」というだけの事なので、支援を保証するものではないのです。
しかし、金融機関に計画書を出すことが無意味かと言えばそうではなく、経営の実態を把握することで、支援を受けやすくなります。
直接的にはないかもしれませんが、間接的にメリットにつながります。
早期経営改善計画の内容
原則
- ビジネスモデル俯瞰図
- 資金実績・計画
- 損益計画
- アクションプラン
を含むものです。
このサンプルのないようでは、せっかく作った割にはあっさりしているので、実質負担額10万円の価値があるかどうかは疑問です。
そもそも計画は、作成した後に進捗管理や見直しのために作成するものです。
作成しただけではあまり意味がなく、次につながるものでなければなりません。
当事務所が作成する場合は、もっとしっかりとしたものを作成いたします。
どのような時に「早期経営改善計画策定支援」を活用すべきか
では、早期経営改善計画策定支援はどのように活用すればよいでしょうか。
今よりもっと良くするために中期計画策定をするケース
ひとつは、事業もしっかりしてきて、これから中期計画を立てたいけれど、ノウハウも時間もないから専門家にお願いしたいケース。
創業期2~3年経ったくらいで、一度しっかりと中期的に考えてみようかと考えるタイミング。
もしくは、事業承継が進み新経営者が事業全体を知って、自分なりの計画を作成しようと考えるタイミング、が良いのではないかと思います。
計画書をしっかりとした書面化することで、経営のPDCAサイクルをまわしやすくなり、より経営の質を高める効果が望めます。
中期計画を作成するのに、早期経営改善計画策定支援を活用することはタイミング的にもピッタリです。
金融機関にとっても金融庁から事業性評価融資を行うように言われていますので、しっかりした計画書があれば喜ばれます。
より良い条件で資金調達が可能となる可能性があります。
金融機関の協力が必要となってきているケース
もうひとつは、リスケ(返済猶予)までいかないけれど、早めに金融機関と協議して経営を改善していきたいケース。
金融機関としてもリスケ債権となれば債権者区分の評価が下がってしまいますので、早めに対処できるに越したことはありません。
正常中であれば、借入のまき直しなどにも応じてもらいやすいですし、短期資金も出してもらいやすいです。
早めであれば、金融機関側も提案できる内容の幅が広がります。
ですので文字通り早期経営改善を図りたい事業者にとってはピッタリな制度と言えます。
計画書が必要となっているケース
最後に、リスケ(返済猶予)中だが計画書が必要になっているケース。
リスケ中だけれども、なんとか脱出の目途が付いてきた。もしくは短期資金だけでも融資してもらえると現状を脱却できる。
このような場合、計画書を元に他の制度を利用して改善できるケースがあります。
そのような大体の場合には計画書が求められますので、その基礎となる計画書作成を早期経営改善計画策定支援制度を利用して作成します。
経営改善計画策定支援までいくと大変だし認定支援機関にお金が払えない場合は、まず早期経営改善計画策定支援からはじめるのもひとつです。
まとめ
早期経営改善計画策定支援はなかなか知られていなかったり、一部の悪質な人のせいで悪い評判があったりとなかなか有効に活用できていない制度かもしれません。
しかし上記で挙げた、
- 創業期2~3年経ったくらいで、一度しっかりと中期的に考えてみようかと考えるタイミング
- 事業承継が進み新経営者が事業全体を知って、自分なりの計画を作成しようと考えるタイミング
- 早めに金融機関と協議して経営を改善していきたいタイミング
- 計画書が必要となっているタイミング
で使うと有効に活用できます。
何も無い状態で使うのはもったいないですので、計画作成の必要性を経営者自身が感じられたタイミングで活用されればと思います。
当事務所は認定経営革新等支援機関ですので、早期経営改善計画を使った支援に力を入れています。
特に金融機関と協力して進めますので、計画書を作成する意義のある場面でのみご提案させていただいています。
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末信 公平
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