信用補完制度の見直しで保証協会の保証割合は減る傾向
平成30年4月1日から信用補完制度の見直しがスタートします
信用補完制度とは
一般に、中小企業は信用力に乏しく、民間金融機関だけで資金繰りを円滑に進めることは困難です。このため、各地の信用保証協会が、事業者の民間金融機関からの借入れに対して保証を行い、返済が滞った際には、代わって債務の支払いを実施(代位弁済)しています。
現行の信用補完制度は、以下の2つの保証制度を柱としています。(各々最大で2億8千万円まで保証可)
・ 一般保証:
融資額の80%を保証し、20%を金融機関が負担(責任共有制度)。ただし、小規模事業者や創業者等に対する保証は100%保証。
・ セーフティネット保証:
自然災害時や構造不況業種を対象に、一般保証とは別枠で融資額の原則100%を保証(中小企業庁HPより)
簡単に言えば、借り手(事業主)が保証料を支払って保証してもらいお金を借りる仕組みです。
見直しに関する考え方
- 信用補完制度は中小企業の資金繰りを支える重要な制度であり、中小企業がライフステージの様々な局面で必要とする多様な資金需要(小口、創業、承継等)や、大規模な経済危機、災害等により信用の収縮が生じた場合における資金需要等に一層対応できるものとしていくことが重要です。
- 信用保証への過度な依存が進んでしまうと、金融機関にとっては、事業性評価融資やその後の期中管理・経営支援への動機が失われるおそれがあるとともに、中小企業にとっても資金調達が容易になることから、かえって経営改善への意欲が失われるといった副作用も指摘がされています。
- このため、中小企業の資金需要に一層きめ細かく対応するとともに、信用保証協会と金融機関が連携して中小企業への経営支援を強化することで、中小企業の経営改善・生産性向上を一層進める仕組みを構築することが必要であるという考え方の下、今般の見直しを行っています。
(中小企業庁HPより)
この見直しに関する考え方で最も大事なのは2番目の項目です。
簡単に言えば、「信用保証を使っていると金融機関の能力が下がるし、中小企業も甘えるから見直ししますよ」ということです。
また、ここでも「事業性評価融資」という言葉が出てきました。
これは金融庁が推進している「金融機関が企業をしっかり見て、お金を貸しなさい。数字が悪い会社だからと言って貸さないのではなく、将来性に貸しなさい」といった方針を反映してのことです。
何が変わるのか
それでは具体的に何が変わるのか?
中小企業の多様な資金需要に対するきめ細やかな対応
- 危機関連保証の創設【信用保険法改正】 大規模な経済危機、災害などの場合に保証します
- 小規模事業者への支援拡充【信用保険法改正】 補償額を増やします
- 創業関連保証の拡充【産業競争力強化法改正】 創業関連保証額を増やします
- 特定経営承継関連保証の創設【経営承継法改正】 事業承継に係る資金の借入に対して保証します
- 経営改善・事業再生の促進、再チャレンジ支援等
- 円滑な撤退支援 廃業するときに係る資金の借入に対して保証します
- 信用保証協会における出資ファンドの対象拡大等【信用保証協会法改正】
となっています。
信用保証協会と金融機関とが連携した支援
- 信用保証協会と金融機関の連携 金融機関と信用保証協会で適切なリスク分担を行います
- 信用保証協会における経営支援【保証協会法改正】 信用保証協会の業務として中小企業に対する経営支援を行います
- セーフティネット保証5号の保証割合の引下げ 保証第5号の補償割合を100%から80%に減らします
となっています。
中小企業にとってどんな影響があるのか
これらの変更点で、中小企業にとって注意する点は、
保証協会の保証割合が減り、融資を受けにくくなる可能性が高まる
ことです。
これまでは保証協会が80~100%保証してくれたから借りれていた融資が、今後受けれなくなる可能性があるという事です。
セーフティネット保証5号とは、業況の悪化している業種は保証を100%行いますというものでした。それが80%になるので、金融機関の対応も変わるかもしれません。
参考:セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))
また、通常の保証でも80%から減らすと言っているようなものなので、こちらも金融機関の対応に変化が出そうです。
現場の金融機関の人の話では、保証割合は50%までは進むことになると想定しているようです。
中小企業はどのような対策を講じるべきか
金融庁は現在、金融機関に対して事業性評価融資を行うように通達しています。
保証協会の保証率を下げるのも、プロパー融資(金融機関がリスクをとる融資)を増やし、事業性評価融資を行いなさいとの金融庁の意向です。
では中小企業はどのような対策をとるべきか。
ひとつは、経営基盤を安定させ収益を確保させること。
もう一つは、事業性評価融資を受けれるように、しっかりとした内部要因外部要因を抑えた事業計画書の作成になります。
現時点では事業性評価による融資を受けれる可能性はほとんどないと思われますが、いずれ変わります。
現時点で経営が思わしくない企業ほど、計画書を作成して経営を改善することが望まれます。
まとめ
企業側も、事業性評価融資に備える必要があります。
これまでは社長の頭の中にだけあって、感覚で経営をしてても融資を受けれたかもしれませんが、これからは書面で伝える必要があります。
そのための第一歩として、事業計画を作成して経営を行うことが必要となります。
当事務所の別サイトでは、計画書の作成の流れなどをまとめております。
リスケに関わらず、計画書の作成の流れは変わりません。参考にしてください。
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末信 公平
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