資金繰り表を作成する 【経営改善計画書作成-21<資金繰り表>】
前回は、予想の財務諸表を作成するところまでお話をしました。
今回は、短期的なお金の流れをつかむ資金繰り表のお話をします。
日常のお金の出入りを管理をする資金繰り表
資金繰り表とは、月別・日別のお金の出入りを管理する表です。
前回までに作成した財務諸表は年単位で5年分ですが、資金繰り表は足元のお金の出入りを管理するため、月単位、日単位に作成します。
必要なお金を予測する
資金繰り表の主な役割は、支払いに対する資金の手当てができているかをみることです。
通常では、仕入れを先に行った後に売上が発生します。そのため、お金は先に支払い後にもらうことになります。
また、売上が発生しなくても、従業員の給料や家賃などの経費は発生します。
このお金の受け取りと支払いのタイミングの差や売上が無くても決まって発生経費があるために、どれくらいのお金が入金されるまでに必要なのかを知るため、資金繰り表を作成します。
もし表を作成して、足りないことが判明すれば、お金をどこからか調達して支払うことになります。
この日々のお金のやりくりをするために作成する資料を資金繰り表と呼びます。
リスケの依頼の際は、「このままでは○○月に資金がマイナスになりますので、翌月から返済を猶予してください」と依頼するための資料となります。
この資料が甘ければ、金融機関も納得しません。
予想資金繰り表の作成は半年~1年後まで
資金繰り表の最も重要な作成目的は、今後の資金繰りの予想(予定)の把握です。
概ね半年~1年後までの資金繰り表を、月別で作成します。
資金繰りが厳しい場合、日別で作成をして、資金が足らなくなる日がないのかのチェックをします。
月別で作成をしてみて、予想の月末現預金残高が少ないようであれば、日別で作成するのが望ましいです。
私は勤務時代、直近の1~2か月は支払い漏れが無いように、また業務段取をつけるために日繰りで作成していました。
仕入や経費は支払い条件が異なる先があったりしますので、可能な限り可視化をして間違いを防ぐようにしていました。
会社により必要なことが異なると思いますので、個々の実情に合せて資金繰り表を作成します。
資金繰り表の更新のタイミング
資金繰り表は一度作れば終わりでなく、極端に言えば毎日更新して最新の資金繰り表を作成する方が望ましいです。
とは言え実務的には、資金繰りに余裕があれば月に1回で良いと思います。
資金繰りが苦しい場合は、入金や支払いが多い五十日(ごとおび、5日・10日・15日・20日・25日・末日)の翌日か週に1回程度は最新の状態にしておきます。
また、売上の受注状況がわかり次第最新の資金繰り表を作成することができれば、よりベターです。
資金繰り表の見本
資金繰り表は財務諸表のように決められた形式はありません。
下記の例では、キャッシュフロー計算書の並びに合わせて、経常収支、投資収支、財務収支と分けています。
資金繰り実績表の作成には元帳データを使う
資金繰り実績表の作成は、会計データの元帳データから作成するのが簡単です。
使う元帳は、現金元帳、預金元帳などの、現預金の動きがわかる元帳です。
会計データを入力を使わない場合は、現金出納帳や預金通帳などをみて直接入力していきます。
予想資金繰り表の作成は取引条件に注意して作成する
予想の資金繰り表を作成する場合は、得意先からの回収や仕入先への支払いのサイトを確認して作成していきます。
例えば、20日締め、翌20日支払の仕入先ならば、支払額を翌月に入力します。
細かくするのであれば、その仕入れ先から仕入れるタイミングで分けます。
仮に5月21日~月末までに仕入れがあるとしたら、6月20日締めの7月20日支払になります。
件数が少なければ1件1件個別に予想しても良いですが、件数が多い場合は主な取引先だけ注意して、その他はこれまでの実績に基づいて割合で作成します。
その他の注意点
年に数回しか発生しない支払(年払いの保険料、税金)は注意して、資金繰り表に反映させます。
また、投資などが予定されている場合も忘れずに反映させます。
予想の段階でマイナスの残高となったら
予想の資金繰り表を作成したら、月々の残高がマイナスでないか、もちくは極端に残高が少なくないかの確認をします。
もしそのような月が見つかったら、日繰り表を作成しましょう。
どの日に、何の要因でマイナスになるのかを知り、対策を行います。
支払いを抑えるか、新たに資金調達をするのかを考えます。
リスケを検討している会社は通常新たに融資を受けることは困難です。しかし、確実に回収の見込みがある売上の証拠があればツナギ融資に応じてもらえるかもしれません。
予想の資金繰り表を作成することで、対策を施す時間が手に入ります。
まとめ
資金繰り表はお金の出入りを管理する表なので、簿記のルールなど関係なく作成できます。
資金繰り表を作成することで過去の実際の傾向を知り、予想資金繰り表を作成することで未来のお金の見える化を図ります。
予想の資金繰り表を作成することは、対策を施す時間を手に入れることです。
どんぶり勘定での経営では、気が付いた時には打ち手が限られてしまうかもしれません。
リスケを確実に実行してもらうためにも、しっかりとした資金繰り表を作成しましょう。
【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成】シリーズ
次回 借入金返済計画表を作成する 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-22<借入金返済計画表>】
前回 予想財務諸表を作成する 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-20<数値計画-②>】
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末信 公平
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