事業事業再構築補助金の基本的な考え方「事業再構築指針ver1.1」のまとめ
経済産業省(中小企業庁)が実施する新型コロナウイルス感染症対策のなかでも、とりわけ大型の補助金である「事業再構築補助金」の指針が示されました。
2021.4.2追記
事業再構築指針の手引きver1.1に対応して、追記変更しました。
募集要領が発表されてからの変更に少々驚きましたが、変更点は下記になります。
バージョン1.1 公表日 令和3年3月29日
• 製品等の新規性要件について、事業計画においてお示しいただく事項から「競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと」を削除。
• 製品等の新規性要件を満たさない場合として、「事業者の事業実態に照らして容易に製造等が可能な新製品等を製造等する場合」を追加。
• 業態転換の該当要件を「設備撤去等又はデジタル活用要件」から「商品等の新規性要件又は設備撤去等要件」に修正。
• 製造方法等の新規性要件について、事業計画においてお示しいただく事項から「競合他社の多くが既に製品等を製造等するのに用いている製造方法等ではないこと」を削除。
• 製造方法等の新規性要件を満たさない場合として、「事業者の事業実態に照らして容易に行うことが可能な新たな製造方法等で、製品等を製造等する場合」を追加。
• その他構成及び表現を修正。(事業再構築指針の手引きの改訂履歴より)
令和2年度3次補正予算案が発表されてから、あらゆるところで事業再構築補助金の話が出ており、気になっていた方も多いと思います。
当社でも金融機関の方やお客様などから、話題のネタでもあるので色々と相談を受けていました。
3月中に募集が始まるとされていた事業再構築補助金ですが、ようやく指針が示されました。
そこで今回は、これから色々なところで聞かれることもあると思い、経済産業省中小企業庁から発表された「事業再構築指針の手引きver1.1」を現時点で自分なりにまとめてみました。
中小企業卒業枠、中堅企業グローバルV字回復枠については、当社のターゲット層から外れますので割愛させていただきます。
「事業再構築補助金」を利用するにあたって大事な「事業再構築指針」
事業再構築指針は、事業再構築補助金を活用することができるかどうかの第一関門です。
「事業再構築」とは、「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」又は「事業再編」の5つを指し、本事業に申請するためには、これら5つのうち、いずれかの類
型に該当する事業計画を認定支援機関と策定することが必要となります。(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
最低限クリアすべき条件ともなりますので、自社の計画が当てはまるかどうかをよく検討しなければなりません。
ですがなかなか複雑で、一読しただけではすぐには理解できませんでした。
実際に計画を策定する段階においても、表現が曖昧であったりするので悩みそうです。
事業再構築5つの定義
事業再構築の定義は、以下の5つが示されています。
- 新分野展開:新たな製品等で新たな市場に進出する
- 事業転換:主な「事業」を転換する
- 業種転換:主な「業種」を転換する
- 業態転換:製造方法等を転換する
- 事業再編:事業再編を通じて新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行う
似たような名前が付いていますが、どの要件に当てはまるのかで注意する項目は7つです。
事業再構築の定義で抑えるべき7項目
事業再構築の定義は30ページ近くある資料にずらずらと記載されていますが、一覧にまとめると下記になります。
大きく分けると
- 日本標準産業分類に基づく大分類の産業が変わるのか?
- 日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は細分類の産業が変わるのか?
- 製品等の新規性要件は全て満たすのか?
- 市場の新規性要件は満たすのか?
- 製造方法等の新規性要件は満たすのか?
設備撤去等又はデジタル活用要件は満たすのか?- 商品等の新規性要件又は設備撤去等要件
- 市場の新規性要件は満たすのか?
の7項目を、各定義に当てはめて考えます。
製品等の新規性要件
製品等の新規性要件は、「事業転換」「業種転換」「新分野展開」「業態転換(製造業)」にかかってきます。
「業態転換(製造業以外)」には全て関係してきますので、重要な項目と言えます。
製品等の新規性要件は4つ3つありますが、全て満たす必要があるので、注意してください。
その4項目は
①過去に製造等した実績がないこと
過去に製造等していた製品等を再製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。
過去に製造等した実績がないものにチャレンジすることが必要になります。②製造等に用いる主要な設備を変更すること
既存の設備でも製造等可能な製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。主要な設備を変更することが新たな製品等を製造等するのに必要であることが要件となります。
③競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
競合他社の多くが既に製造等している製品等を、新たに製造等することは容易であると考えられるため、申請に際しては、競合他社の動向を調査し、新たに製造等する製品等が、競合他社の多くにおいて製造等されているものではないことを示すことが必要となります。③定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製品等であることを示す必要があります。
(例:既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等)(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
①②④は虚偽の申告をしなければ大丈夫な部分かなと思います。
②に関しては、ひょっとすると既存設備全てを申告することも考えられます。固定資産台帳などと合わせて提出があるかもしれません。
③競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと、は自社ではなく他社の「ないこと」を計画で示す必要があるので、説得材料をどうするかに悩みそうです。
少なくとも、調査をしたことを計画書に記載する必要は出てきそうです。
手引書に書かれている”要件を満たさない場合”を参考にしながら自社が要件に当てはまるのかを考える必要があります。
①「過去に製造等した実績がないこと」を満たさない場合
• 過去に製造等していた製品等を再製造等する場合は要件を満たしません。
(例)過去に一度製造していた自動車部品と同じ部品を再び製造する場合。②「製造等に用いる主要な設備を変更すること」を満たさない場合
(※)新たな投資を必要とせず、単に商品ラインナップを増やすような場合は要件を満たしません。
(※)単により性能の高い同種の機械設備を導入するだけでは要件を満たしません。
• 既存の製品等の製造等に必要な主な設備が、新製品等の製造等に必要な主な設備と変わらない場合は要件を満たしません。
(例)これまでパウンドケーキの製造の際に用いていたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合。
(例)従来パウンドケーキの製造に用いていたオーブン機器をより性能のよいものに単に買い換える場合。
③「競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと」を満たさない場合
• 競合他社の多くが既に製造等している製品等である場合は要件を満たしません。
(例)パウンドケーキを製造している事業者が、競合他社の多くが既に製造しているにもかかわらず、新たに焼きプリンを製造する場合。③「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさない場合(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
• 既存の製品等と新製品等の性能に有意な性能の差が認められない場合は要件を満たしません。
(例)従来から製造していた半導体と性能にほぼ差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合。④その他の場合
• 上記の他、「既存の製品等の製造量等を増やす場合」や「事業者の事業実態に照らして容易に製造等が可能な新製品等を製造等する場合」、「既存の製品等に容易な改変を加えた新製品等を製造等する場合」、、「既存の製品等を単純に組み合わせただけの新製品等を製造等する場合」「既存の製品等を単に組み合わせて新製品等を製造等する場合」にも要件を満たしません。
(例)自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合。(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
市場の新規性要件
市場の新規性要件は、「事業転換」「業種転換」「新分野展開」にかかってきます。
市場の新規性要件は、下記になります。
①既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
市場の新規性要件を満たすためには、新製品等を販売した際に、既存製品等の需要の多くが代替されることなく、売上が販売前と比べて大きく減少しないことや、むしろ相乗効果により増大することを事業計画において示す必要があります。
(例)日本料理店が、新たにオンラインの料理教室を始める場合、オンライン料理教室を始めたことにより、日本料理店の売上は変わらない(むしろ宣伝による相乗効果により上がる)と考えられることから、市場の新規性要件を満たすと考えられる。
②既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)
既存製品等と新製品等の需要・売上の決定要素を考慮し、顧客層(※)が異なることを事業計画において示す場合には、より高い評価を受けることができる場合があります。
(※)年齢層、性別、所得、職業、地域、資産、家族構成等(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
①は必須項目で、②は任意要件となっています。
逆に要件を満たさない場合は下記になります。
①「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」を満たさない場合
• 既存の製品等とは別の製品等だが、対象とする市場が同一である場合(新製品等を販売した際に、既存製品
等の需要がそのまま代替され、その売上が減少する場合)は要件を満たしません。(例)アイスクリームを提供していた事業者が、新たにかき氷を販売するが、単純に従来の顧客がアイスクリームの代わりにかき氷を購入することを想定する事業計画を策定した場合、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。
(例)アイスクリームを提供していた事業者が新たにかき氷を販売する場合、かき氷の提供によりアイスクリームの売上高は減少すると考えられるため、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。
• 既存の製品等の市場の一部のみを対象とするものである場合は要件を満たしません。(例)アイスクリームを提供している事業者が、バニラアイスクリームに特化して提供するが、単純に従来の顧客が新たに提供するバニラアイスクリームを購入することを想定する事業計画を策定した場合、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。
(例)アイスクリームを提供している事業者が、バニラアイスクリームに特化して提供する場合、アイスクリームの市場の一部のみを対象とするものと考えられ、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。
②「既存製品等と新製品等の顧客層が異なること」を満たさない場合(任意要件)
• 既存製品等と新製品等の売上高や販売価格の決定要素を考慮し、顧客層が異なることを示していない場合は、高い評価が得られない可能性があります。
(例)宿泊施設において、大宴会場を個室食事処に改修する場合、その事実のみでは利用する客層が異なることが示されておらず、高い評価が得られないと考えられる。従来と異なる単価の客層や、観光客や日帰り入浴利用客など宿泊者以外も利用できること等を示すことで高い評価を受けられる可能性がある。(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
代替性とは要件を満たさない場合の例のように、お互いの売上を食い合わないことです。
バージョンが変わり、表現も異なりました。
例では、単純に従来の顧客がアイスクリームの代わりにかき氷を購入することを想定する事業計画をした場合、満たさないと考えられる。となってますので、少なくとも事業計画では代替性がないとすんなりと読めるようにしておく必要があるかと思います。
例では、かき氷を販売することで既存のアイスクリームの売上が減少すると考えられる。とされてます。
必ずしもかき氷を販売したからと言ってアイスクリームが減るとは限らないとは思いますが、決めるのは採点者なので、世間一般の人が考えて「食い合うと思われるな」といった事は避けるほうが無難かもしれません。
どうしても申請をしたいのであれば、「食い合わない」ことを計画書内で書ききって納得させる必要があるかと思います。
もう一つの任意要件である”異なる客層”ですが、「顧客層が異なることを事業計画において示す場合には、より高い評価を受けることができる場合があります。」とされていますので、できるだけ示した方が良いでしょう。
これは、「こうしてほしい」という国(経済産業省)からのメッセージと捉え、点数を拾って採択の可能性を高めたほうが良いと考えます。
売上高構成比の要件
売上高構成比の要件として、
「事業転換」「業種転換」の要件は
3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の属する事業・業種が、
売上高構成比の最も高い事業・業種
となる計画を策定する
「新分野展開」の要件は
3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の売上高が
総売高の10%以上
となる計画を策定する
「業態転換」の要件は
3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の製造方法等による売上高が
総売上高の10%以上
を占める計画を策定する
と大きく分けて、売上構成比が最も高くなる必要があるのか、総売上高の10%以上となる必要があるのか、の二つに分けられます。
そもそも事業再構築補助金の狙いは、「企業の思い切った事業再構築を支援」とリーフレットに大きく書かれています。
「経済社会の変化に対応して生き残りを図ってください。国はそんな企業を支援します。」
と宣言をしているようなものなので、補助金も出そうだしちょこっと試しにやってみよう、というような企業はそもそもが対象外にしたいのだと思います。
なので、計画終了時には主力事業になる意気込みをみせる企業を支援するんだ、といったところでしょうか。
そもそも的に新事業がそんなにすぐに育ったら誰も苦労しませんので、10%以上要件ができたと思います。
ですが小さく、
「10%は申請するための最低条件です。新たな製品の売上高がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。」
と記載されていますので、10%は最低条件に過ぎないという事と考えます。
だからと言って適当に数値計画を出せばいいというものではなく、”積算根拠”は必ずみられるものと考えます。
むしろ適当な数値計画はマイナスになりかねないと思います。
さじ加減が難しいところですが、積算根拠を示し実現性が高いことを訴求する必要があると考えます。
日本標準産業分類に基づく大分類の産業
日本標準産業分類と聞きなれない言葉が出てきましたが、こちらの「政府統計の総合窓口」から調べることができます。
例えば、手引きのP.12の例にある”日本料理店”の場合は
大分類:M宿泊業、飲食サービス業
中分類:76飲食店
小分類:762専門料理店
細分類:7621日本料理店
となります。
同様に、”プレス加工用金型”の場合は
大分類:E製造業
中分類:26生産用機械器具製造業
小分類:269その他の生産用機械・同部分品製造業
細分類:2691金属用金型・同部分品・付属品製造業
となります。
なので大分類とは、
A~Tまでの分類コードで分けられた項目です。
大分類が関係するのは「業種転換」で、平たく言えば”全く違うビジネスをする”ことと言えます。
日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は細分類の産業
大分類の下に、中分類→小分類→細分類と細かに分けられていきますが、関係するのは「事業転換」です。
先ほどの業種転換ほどではないが、”同じ分野で違うビジネスをする”ことと言えます。
製品等の新規性要件、市場の新規性要件、売上要件を満たし、かつ、日本産業分類が変わるような事業再構築の計画であれば、「業種転換」「事業転換」のどちらかになります。
一方で、売上要件だけが総売上の10%以上で産業分類の要件を満たさなければ「新分野展開」となります。
製造方法等の新規性要件
「業種転換」の要件にだけ必要な項目として、製造方法等の新規性要件があります。
製造方法等と書かれていますが、提供方法も含まれます。
先ほど似た言葉で「製品等の新規性要件について」が出てきましたが、今回は「製造方法等の新規性要件」になります。
出来上がった製品やサービスなのか、それとも製造を作る方法や提供方法なのかの違いです。
製造方法等の新規性要件は下記の4要件全てを満たす必要があります。
①過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと
過去に製造等していた方法と同じ方法で製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな方法で製品等を製造等しているとはいえません。過去に実績がない方法で製品等を製造等することにチャレンジすることが必要になります。②新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること
既存の設備でも製造等可能な方法で、製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな方法で製品等を製造等しているとはいえません。主要な設備を変更することが新たな方法製品等を製造等するのに必要であることが要件となります。
③競合他社の多くが既に製品等を製造等するのに用いている製造方法等ではないこと
競合他社の多くが、既に行っている製造方法等と同じ方法で、製品等を新たに製造等することは容易であると考えられるため、申請に際しては、競合他社の動向を調査し、新たな製造方法が、競合他社の多くにおいて、行われている方法ではないことを示すことが必要となります。③定量的に性能又は効能が異なること(製造方法等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製造方法等が有効であることを示す必要があります。
(例:既存の製造方法と比べ、新たな製造方法の方が、生産効率、燃費効率等がX%向上する等)(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
また、満たさない場合は下記になります。
①「過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと」を満たさない場合
• 過去に製品等を製造等していた方法により、改めて製品等を製造等する場合は要件を満たしません。
(例)衣料品販売店を経営する企業が、既に行っているネット販売事業を拡大する場合。②「新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること」を満たさない場合
• 既存の製造方法等に必要な主な設備が新たな製造方法等に必要な主な設備と変わらない場合は要件を満たしません。
(例)衣料品販売店が、新たな設備投資を伴わず、プラットフォームサービスとして提供されているECサイトを用いて販売網を拡大する場合。
③「競合他社の多くが既に製品等を製造等するのに用いている製造方法等ではないこと」を満たさない場合
• 競合他社の多くが、既に製品等を製造等するのに用いている製造方法等である場合は要件を満たしません。
(例)新たに専用機械を導入して製造方法を変更しようとしたが、既に競合他社の多くが、同種の製造方法により、製品を製造している場合。③「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさない場合(製造方法等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
• 既存の製品等と新製品等の性能に有意な性能の差が認められない場合は要件を満たしません。
(例)工場の無人化を図るためにデジタル技術を導入する計画を立てたが、従来と比べて生産性の向上が何ら見込まれない場合。(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
基本的には製品等の新規性要件と同じになりますが、③の他者の事についてはなかなか説明をするのが苦労する点かと思います。
また、例で示されている、「ヨガ教室を営んでいる競合他社の多くが、オンライン専用のヨガ教室サービスを提供していないことを示すことで要件を満たす。」ですが、オンライン専用とまでなれば、確かに少なそうかな?と思います。(多くはリアルな教室とオンライン教室を併用しているかと思いますので)ここまで振り切れれば要件を満たすと言う事かもしれません。
こちらの事例もバージョンが変わり修正が加えられました。要件的には緩和された感じです。
設備撤去等又はデジタル活用要件
設備撤去等又はデジタル活用要件ですが、これは製造業以外の「業態転換」の選択必須項目です。
商品等の新規性要件又は設備撤去となります。
既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うもの又は非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化等に資するデジタル技術の活用を伴うもの(単に汎用性のあるデジタル機器やソフトの利用ではなく、これらを新たな提供方法のために事業に応じてカスタマイズする、改良するなどの工夫(※1)が必要)である必要があります。
(※2)(商品又はサービスの提供方法を変更する場合に限ります)。【設備撤去等又はデジタル活用要件】
(※1)例えば、単にタブレット端末を利用するだけでは要件を満たさず、新たな提供方法のために事業に応じて、必要なデータベースを整備し、在庫管理等に用いるなどカスタマイズすることが必要です。
(※2)上記要件は申請するための最低条件です。先進的なデジタル技術(例えばAI・IoT技術等)を活用する計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。
(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
既存設備の撤去や店舗の縮小は実施すれば要件に当てはまりますが、デジタル活用はしっかりと考えないといけないと思います。
上記の例や、満たさない場合の要件を読めば、突っ込んだ投資を求められているようです。
【設備撤去等又はデジタル活用要件】を満たさない場合(提供方法の変更の場合に限る)
• 「既存設備の撤去や既存店舗の縮小等を伴うものではない場合」又は「デジタル技術を活用した非対面化、無人化・省人化、
自動化、最適化等に資するものでない場合」には要件を満たしません。
※単に汎用性のあるデジタル機器やソフトを利用する場合には要件を満たさず、例えば効率化のためにこれらを事業の内容に合わせてカスタマイズ・改良する、専用品を導入するなどの工夫が必要となります。
具体的には、例えば、衣服店が、ECサイトでの販売を始めるにあたって、電子タグを用いた在庫管理の最適化を行うような取組みが考えられます。
(例)飲食店が、例えば、設備の撤去も最適化のための在庫管理・シフト管理等を行うデジタル技術の活用もなく、単にテイクアウト販売を新たに始める場合。
(経済産業省中小企業庁 事業再構築指針の手引きより)
わかりにくいですが、業態転換のサービス業の場合は、【製造方法等の新規性要件】と【商品等の新規性要件】又は【設備撤去等要件】が必要になります。
新規性とはどこまでをいうのか?
ここまで「新規性」という言葉が幾度となく出てきましたが、新規性とはどこまでを言うのでしょうか?
手引書には
「「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。」
と記載されています。
中小企業等自身にとっての新規性と言われてもなかなか難しいですが、一つの考え方として、その企業の「商圏」において新規性があればまずはクリアされるのではないかと思います。
ここまでの要件を満たすことをざっくりとまとめて言えば「初めて取り組むこと」「設備を変更しないとできないこと」「競合他社がやっていないこと」「性能や効能がこれまでと違うこと」です。
これはよく言われる「差別化」を満たすことです。
国からの「まずは、差別化の第一歩であるポジショニング戦略を取ってください」とのメッセージでしょうか。
金融機関との関係性が試される
基本的には業績が悪化し、コロナ対応融資などでかなりの負債を抱えているであろう事業者が、2/3~3/4の補助金を受けるとはいえ、新事業に資金を投じることとなります。
補助金は基本的に、先行してお金を使い、その後に補助金をもらう流れです。(現段階では概算支払いがあるかわかりませんので)
と言う事は、新たな資金調達が必要となり、金融機関の支援を受ける体制があるのかが一つの超えるべきハードルとなります。
今回の事業再構築補助金も、補助金額が3000万円を超える案件は金融機関も参加して計画書を策定することとなっています。
なので、3000万円を超えなくても金融機関を巻き込んでの取組が望ましいと考えます。(金融機関との取組状況は記載する必要があり、採点項目になるのではと想像します)
補助金に応募する予定で、現時点での手元にある自己資金だけでは足りないようであれば、金融機関との相談はすでに始めておいた方が良いかと思います。
まとめ
ここまで事業再構築指針をみてきましたが、指針に基づいて計画を書けば「新規事業開発」にあたります。
しかもコロナウイルスの影響で業績が悪化し、今後の見通しも暗いといった中でのチャレンジになります。
事業の縮小や業種業態転換を促していることからも、「背水の陣」的な経営戦略になります。
平時でも新規事業を実施して成果を出すことは難しいと言われてますが、資金的余裕もない中での取り組みになるかもしれませんので、難易度は平時より高くなると思います。
補助金があるからと言って、無理やり計画を出して進めることはあまりお勧めはできません。
よく考えて、経営判断を下していただければと思います。
こちらの記事もおすすめです
末信 公平
最新記事 by 末信 公平 (全て見る)
- 中小企業診断士1次試験7科目まとめて受験のメリット - 2022-03-29
- 経営データは鮮度が大事 2カ月遅れの試算表では活用しづらい - 2022-03-09
- 資格は使いよう 役に立つか立たないかはその人次第 - 2022-03-01