業績悪化の理由は数字と向き合わないから
問題を先送りにすればするほど取り返しがつかなくなる
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
苦しい事も過ぎてしまえば忘れてしまうことのたとえ。また、苦しいときに受けた恩も楽になれば忘れてしまうことのたとえ。
(出典:三省堂/大辞林より)
嫌なことや辛かったことをいつまでも覚えたままだと精神がおかしくなってしまうでしょう。
人間には、「忘れる」ことが大事な時もあります。
しかし、経営は、ただ苦しい時をその場しのぎでやり過ごすしてばかりではよくなりません。
誰にも何も言われない経営者は要注意
会社員の場合、仕事で失敗をすれば何らかの注意が入ります。時には怒られるでしょう。
誰かに注意をされる立場であれば、緊張感をもって仕事をします。
しかし経営者の場合は、多くの場合誰からも何も言われません。
耳の痛い事を言ってくれる人材が周りにいることは少ないと思います。
特に創業者でワンマン経営者ほど、注意を受ける機会は無くなります。
誰にも何も言われず、たとえ失敗したとしても責任を取る必要もない事が続けば経営はおかしくなっていきます。
失敗から学ぶことが無くなると成長は止まる
企業経営には失敗がつきものです。
100発100中で施策が当たることはまずありません。
企業経営は失敗があるのを前提に考えるほうがよいでしょう。
しかし、同じ失敗をしても、そこから学ぶ企業と、何も学ばずまた同じ失敗を繰り返す企業に分かれます。
その理由の一つに、失敗を認めない組織風土であること。
もう一つは、経営者は絶対に正しいもとのされ、適切に失敗を受け入れない組織風土であること。
この二つの組織風土がある場合、失敗から学ぶことは難しいでしょう。
なぜなら、失敗を認めない組織風土の場合、失敗を隠したり個人が非難されて終わりになる場合が多いからです。
経営者を絶対視している場合は、仮に間違った経営判断をしたところで誰も咎めません。失敗が無かったことにして終わりです。
一方、失敗から学ぶ組織風土の企業では、失敗を隠したりはしません。失敗がでた段階で、次に同じ失敗をしないようにするにはどうするかを前向きに検討します。
失敗をしたという事は、何らかの原因があるので、その原因を考え、改善行動を行えば、少しは前進します。
その、少しの前身の繰り返しが企業を強いものとし、業績を伸ばせる土台となるのです。
問題の先送りは解決が困難になる
問題をとりあえず先送りにしたい気持ちはわかります。
痛みを少しでも伴うことを嫌う気持ちもわかります。
しかし、問題を先送りにして良いことはありません。
問題の火が小さいうちは、バケツや消火器で消せたものが、次第に炎が大きくなり、他に燃え移ったりすれば消火が困難になります。
問題を先送りにして、目の前の困難をやり過ごすことを繰り返すうちに取り返しがつかなくなります。
忖度社員が多いことは良いことではない
企業は基本的に顧客の方を向いて経営をしなくてはいけません。
顧客に喜んでもらった対価として、お金を稼ぐことができるからです。
しかし、社内の人間の顔色ばかりをうかがって、ご機嫌を取る人が多い組織は、意思決定が内向きになります。
自社の都合ばかりを考えての意思決定なので、顧客のニーズと離れる結果となります。
また、自社の事だけを考えていると、失敗から学ぼうという気も無くなるでしょう。
内向きな論理で動く企業はかなり危険な状態と言えます。
耳の痛いことを言ってくれれる人材はありがたい
経営者になると、なかなか批判めいた事を言ってくれる人がいなくなります。
経営者が孤独と感じるのはこういったこともあるのでしょう。
耳障りのいいことばかり言ってくれる人はとてもかわいく思います。
反面、耳の痛いことを言ってくる人は不快な気分になるので遠ざけがちです。
しかし、わざわざ耳の痛いことを言ってくるのは、その人なりに真剣に考えているからでもあります。
経験の違いから、全く見当違いな意見を言ってくるかもしれません。
それでも、普段とは違う視点から指摘を受けることは、物事を俯瞰して考えるときに役立ちます。
失敗から学べる組織へ
失敗から学び取るには、なぜそのような結果になったのかを検討する必要があります。
日々の仕事に追われている場合、往々にして後回しにしがちなことです。
しかし、より良い成果を出すには、検討する段階を挟んだ方が遠回りのようながら、結局は近道となります。
よく言われる、PDCAのC(チェック)の部分になります。
会社によってはCからはじめ、CAPD(キャップドゥ)と呼ぶそうです。呼び方はどうでもいいですが、それだけ、Cのチェックを重視していることの現れです。
出てきた問題とそれに対する課題を設定してP(プラン)を作る
Cで問題の抽出と課題を設定します。A(改善)の部分です。
100%正しい答えがすぐに出る訳でもないので仮説で結構です。徐々に精度は上がっていきます。
そこで出てきた問題とそれに対する課題を設定し、どうすれば課題を克服できるのかを落とし込むのがP(プラン)となります。
そして、プランを決められた期間、粛々と進めます。これはD(実行)の部分になります。
よほどひどい場合を除き、すぐに修正はかけません。成果が出るには時間がかかるからです。
そしてまたC(チェック)を行い、A(改善)を考えます。
結局はPDCAを回しきれるかどうかで差がでる
なかなか地味に大変なことを続けるのは困難なものです。
しかし、地道にコツコツした結果は、長期的に見れば大きな差が出ます。
多くの企業ではPDCAを回せていません。
もししっかりとできればそれだけで競合に対して差をつけることも可能です。
失敗から目をそらさず、コツコツと取り組むことが結局は業績を向上させることとなります。
まとめ
なぜ耳の痛いことを言ってくれる人が必要とか、コツコツPDCAを回すことが重要とかを言うのかと言えば、自身が所属した会社ではできていなかったからです。
特に最後に勤めた会社は、経営者の意にそぐわないものは次々と閑職や退職に追いやられていきました。
もちろん、モノを言う人はさっさと見切りをつけてやめていきます。
結果的にはイエスマンの集まり、もしくは、会社がどうなってもいいからとりあえずいけるところまでいようという人だけになりました。
そして、最終的には法的倒産に至りました。
なぜ中小企業診断士として仕事しているかと言えば、これまでの経験を反面教師として、同じような会社を作らないためです。
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末信 公平
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