銀行・信用金庫はリスケ(返済猶予)をどう思うのか?
金融機関はリスケをどう思うのか?
リスケの相談をすると、金融機関にはどう思われるのでしょうか?
「やりたくない。めんどくさい。仕事増やさないでよ。」
「約束を守らないとはどういうことだ!」
「ふざけるんじゃない!何としてでも返せよ!」
などなど、相手も人間なのでネガティブな感情に支配されます。
普通に考えれば返してもらえないので困るからネガティブな反応をする。
ここまでは誰でもわかりますが、もう一歩踏み込んで、なぜネガティブな反応をされるのかを考えてみます。
基本的に担当者が評価されない
まず一つ目の理由として、基本的に担当者が評価されません。
個人レベルの感情の問題でもあります。
リスケの相談を受けると、後ろ向きな仕事に時間を取られることになります。改善計画書などの資料すら持って来ない会社の場合、稟議を通すために誰かが計画書を作成します。誰が書くのかは金融機関によって異なるかもしれませんが、担当者が自ら作成する場合や、担当者の能力が足りない場合はその上司や融資課などの別の部門の人たちです。
今やほとんどの金融機関の人たちは、融資以外の業務のノルマが課されています。昔にはなかった投資信託や保険の販売などです。それに加え、1店舗あたりの営業担当人数も減っています。とうぜんながら、一人当たりの業務量は増えてきます。これまでと同じスピードで仕事を進めていると時間が足りません。さらには残業規制などにより業務時間の上限も厳しく管理されています。一人が使える時間自体も減っているので、時間でカバーすることもできません。
何人もの現役金融機関の人や金融機関OBに尋ねても、リスケに関する計画書などの資料を、企業に変わり作成することに関しては、心底うんざりといった反応でした。
そのような状況の中、自らが評価されないリスケの仕事は全くもって迷惑な話となります。当然ながら、すんなりと認めたくないネガティブな感情に支配されてしまします。
金融機関自体の利益を損ねる
かつての金融不安がおきたことを教訓に、金融機関には金融庁からしっかりと監視がされています。基本となるのは「金融検査マニュアル」と呼ばれるものです。
余談ですが、金融検査マニュアルは廃止される予定です。しかしながら長年使ってきたシステムでもあり、その他のノウハウを有しているわけではないので、基本的にはしばらく同じやり方を踏襲するものと考えます。
その金融検査マニュアルによる監視の指標の一つに、債務者区分による引当金の設定があります。
引当金とは簡単に言えば、貸付先ごとの潰れる可能性に合わせて、あらかじめ費用として計上するものです。安全なところと危ないところに応じてあらかじめ手当てをすることで、金融機関の急激な業績悪化などを防ぎ、混乱を回避するためです。
リスケをするということは、その金融機関での債権者区分、言い換えれば企業の格付けが下がることで、それだけ多くの費用を計上しなくてはなりません。
個人にもノルマがあるように、支店にもノルマがあります。マイナスになる貸先を持つだけで、その分どこかで補填しなくてはいけません。
そのため、金融機関自体の利益を損ねることになる、リスケをお願いしてくる企業に対してネガティブな感情を抱くことになります。
とは言え、自社の存続が最優先
とは言え、当然ながら自社の存続が最優先になります。
いちいち金融機関のご機嫌を伺っているようでは手遅れになってしまいます。
相手も商売として金貸しを行っていますので、必要以上に卑屈になる必要はありません。
そのため、交渉を有利に進めるため、少なくとも協力してもらいやすい環境づくりは、企業側の努力によって作り出す必要があります。
その一つがリスケをお願いするときの資料を、しっかりと企業側で作成することです。
まとめ
リスケは交渉事です。
金融機関側の事情も踏まえて交渉をすることは、相手にとっても助かることです。
多くの企業がリスケの資料作成を丸投げしている状況ですので、しっかりとした経営改善計画書などの資料を用意して誠心誠意交渉をするだけでも、心証は良くなります。
自社の存続が最優先なので、やれることをしっかりと行い、交渉に臨むことが重要です。
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末信 公平
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