丹波篠山黒豆の枝豆収穫体験からちょこっとマーケティングを考えてみる
丹波篠山黒枝豆を収穫
10月の3連休はじめに、丹波篠山へ行き黒枝豆収穫を家族で体験してきました。
場所はこのあたり。
去年たまたまこの付近を通っていたら、枝豆の収穫体験もできると知り今年もやってきました。
やっているのは、普通の農家さんです。(と思います・・・知らないだけかもしれませんが)
丹波篠山の黒枝豆は期間限定で、10月初旬から約3週間だけしか食べられません。
篠山市観光情報
今年は10月5日からが販売解禁でした。
この枝豆は、有名な丹波篠山の黒豆が熟す前のものです。ちなみに黒豆はお節料理に入ってますね。
通常の枝豆は夏ごろに食べますが、こちらは秋に収穫です。
収穫したてをその日にゆでて食べると大変美味!!
機会があれば、ぜひ食べてみてください。
そういえば昔、マンガの「美味しんぼ」にも載ってました。
こんな感じで黒豆を収穫します。
枝付きの枝豆。
後は枝から枝豆をハサミで切り取り、収穫完了となります。
ちょっとおまけをしてもらいましたが、収穫量は2株でボウル2つ分くらいになりました。
ちょこっとマーケティングを考えてみた
昨年に続き、今年もわざわざこのためだけにやってきましたが、なぜそれほどまで満足度が高かったのか?
一応中小企業診断士なので、ちょこっとマーケティング思考で考えてみます。
マーケティングの4Pで整理
4Pとは、商品(Product)、価格(Price)、販売促進(Promotion)、流通(Place)の視点から考えるフレームワークになります。
この4つを考えることで、売れる仕組みになっているのかを考えるものです。もう50年以上前に提唱されたフレームワークですが、現在でもよく使われます。
では、今回の黒枝豆収穫体験に当てはめて整理してみます。
- 商品(Product):丹波篠山の黒枝豆 収穫体験
- 価格(Price):1株450円
- 販売促進(Promotion):観光協会のHP、農家個別には道端の看板、おばあちゃんお手製の名刺
- 流通(Place):3週間の期間限定 基本お客がやってくる
これを、競合や顧客が持っている期待値と比較して優れていると、お客さんの満足度は高まります。
お客の頭の中にある競合と比較
大雑把に言って、お客である私は頭の中で
- 普通の枝豆と比較
- よくある味覚狩りと比較
- 同じ丹波篠山で売っている枝付き黒枝豆と比較
をしました。深く考えればまだ他とも比較しているかもしれませんが、この3点とします。
お客は無意識のうちにいろんなものと比較して購買行動を行います。
では、「普通の枝豆」と何を比較して黒枝豆は満足が高かったのか?それは「味」になります。収穫仕立てというのもあると思いますが、黒枝豆は味が濃く甘いので、これを食べると普通の枝豆が物足りなく感じるくらい美味しいと私は思っています。また価格についても、スーパーでこれだけの量を買えば値段の差はほとんどなくなるので、価格に関しても満足しています。
次に「よくある味覚狩り」と比較した場合です。味覚狩りはその場で食べ放題ですが、一人当たり1,000円以上取られ持ち帰りにもお金が必要となります。味覚狩りはレジャーとして楽しむものですが、今回は家族3人で2株、合計900円で済みました。30分~1時間くらい収穫体験ができたので、レジャーとして考えても割安に思えました。
最後に「丹波篠山で売っている枝付き黒枝豆」と比較した場合です。実は同じくらいの量の枝付き黒枝豆を買って帰ると800円~1,000円くらいします。体験が必要ない人はそれでもいいですが、レジャー込みで900円だったのでお得感を感じました。
上記3つの理由で他のものと比較した場合満足度が高かったですが、「支払った対価に対してどうか」ということが判断基準になっていると言えます。
そして、お客様が支払うお金に対して、様々な理由でお得だったと感じさせることができれば、リピートにつながります。
細かなお客さんのことを考えられた準備
一方で、お金の支払いに対してお得かどうかという基準は競合との比較だけではありません。
「そこまで考えていてくれたの?」というサービスの部分も大事です。
今回は、軍手、長靴、ハサミ、かご、レジャーシート、持ち帰りの紙袋が完備され、それこそ手ぶらで、しかも観光のついでに寄ったとしても汚れることなく収穫体験をさせてもらえるといった「そこまでしてくれるの?」という喜びがありました。農家さんなのに、よくわかっているなぁなどと妙に感心したものです。
このあたりのサービスは、体験するに従い、また、周辺の農家が同じサービスをすれば当たり前の基準が上がり、感動は減っていってしまいます。
また、農家の主人やそのお母さん、奥さんみなさん気持ちの良い挨拶をしてくれて、それだけでも気分よく収穫体験ができました。またまた農家さんなのに、よくわかっているなぁなどと感心しました。
ただ、私は何度も「農家さんなのに」とわざわざ書いているのは、「サービス業のプロでもないのに」とサービス業と勝手に比較しているわけです。これが5つ星のホテルであれば、やってもらって当たり前くらいの気持ちになるので、それほどまで満足度は高まらなかったでしょう。
リピート確保に努力されていた
上記の4Pで
- 販売促進(Promotion):観光協会のHP、農家個別には道端の看板、おばあちゃんお手製の名刺
- 流通(Place):3週間の期間限定 基本お客がやってくる
としました。
栽培場所を移動させれるわけでもないので、基本待ちの営業スタイルになります。
今回お邪魔した農家さんは、主要道路から外れた県道沿いにあります。なので、新規のお客さんが都合よく来てくれる可能性は低いです。
また、篠山市のなかでも西の端になり高速のICも近いわけではいので、これまた観光の中心地である篠山市街から来てもらうのも簡単ではありません。
このような状況では基本的には、指名買いをしてもらう必要があります。そして、関係性を高めてリピートしてもらうことが基本戦略になります。
そこで、この農家さんは愛想よく応対し「おばあちゃんお手製の名刺」を渡すことで来年も来てくださいと販売促進をかけているのです。
さいごに
こちらの農家さんは、他にも作物を作っているでしょう。また、ネットを通じて黒枝豆を販売してるかもしれませんし、JAなどに卸していたりするのでしょう。そもそも、熟すまで待って黒豆として出荷するのがメインかもしれません。
しかし、一株450円で収穫体験をしてもらい満足してもらった方が、手間もかからず利益がいいので、収穫体験による集客も頑張っているのかもしれません。
よく言われる「高付加価値化」となりますが、今ある強みと置かれている状況を勘案して取り組まれている姿は、素直にすばらしいなと感じました。
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末信 公平
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