平成29年度稲刈り終了
私の妻の実家は、先祖代々の農家で、現在は、多くの農家がそうである様に、別の仕事を持ちながら稲作・畑作をする兼業農家です。
毎年5月には田植え、8月下旬には稲刈りを家族総出で行うのが、妻の実家の風物詩となっており、私も妻と結婚以来、毎年田植え・稲刈りを行っています。
意外とキツイ稲刈りの作業
今年も先日、稲刈りを行ってきたのですが、この稲刈り、傍から見ているよりとってもキツイ作業なんです。
私も、妻と結婚するまでは、稲刈りはおろか農作業未経験の現代っ子でした。
ですので、最初の内は、稲刈りなんてコンバインで一気にブイーンでOKでしょうなんて思っていましたが、これは2つの意味で無知で甘い考えでした。
田んぼは四角い
第1に、四角い田んぼの四隅は、その頂点を中心に半径数メートルの範囲で稲を手刈りする必要があります。何故かと言うと、コンバインがあぜ道から田んぼに入る際、まず田んぼの中にコンバインが入る事が出来るスペース分の稲を手刈りしていないと、せっかく育った稲をコンバインが踏み潰すことになってしまうからなのです。そして、そこからコンバインは、四角形の外周を刈りながら進んで行くのですが、突当たりに到着するとそこで方向転換する必要があります。その際にも、コンバインが稲を踏み潰さないで方向転換可能なスペースが必要となるので、田んぼの四隅を手刈りするのです。四隅だけとはいえ、その手刈りは案外大変なものです。
下旬とはいえまだ8月。日差しの強さは真夏とそう変わりません。また、通常、稲刈りの時には、数日前から田んぼの水を抜いてあるので、田んぼの中は普通に歩くことが出来るのですが、妻の実家には、対策をしているにも関わらず、取水口の付近から水が流入して、毎年決まってぐじゅぐじゅの泥沼状態になる田んぼがあります。こんな足を抜き差しする事自体ままならない田んぼでは、ただでさえ暑くてキツイ手刈り作業時間が倍以上も掛かってしまいます。
年代物のコンバイン
第2に、妻の実家のコンバインは30年来の年代物なのです。1ストローク(徒歩と同程度のスピード)で刈れる稲は3列程です。
米の専業農家だとコンバインを定期的に新機種に買い替えていく事もあるのでしょうが、兼業でかつ作付面積もそれほど広くない農家としては、新しいコンバインに買い替えるという選択は余り現実的ではありません。
四角い田んぼの外側から、3列ずつ刈っていくのは案外時間が掛かるもので、また、途中で稲が折れたり倒れたりしていると、コンバインが稲を掴みきれず刈り残しが発生してしまいます。そういった稲を見つけては起こす必要があるので、コンバインの少し先を歩いて回ります。
稲刈りサービス
ところで、我々が作業をしている隣の田んぼでは、農協の稲刈りサービス(有料)が来て、最新鋭のコンバインでそれこそ一気にブイーンと刈って行きました。我々が丸一日掛かる仕事を、ものの1時間程度で終わらせ帰っていきます。
既述の様に稲刈りは大変な作業ですので、若い手伝い手のいない農家を中心に、農協の稲刈りサービスを利用する農家も増えています。
更に、稲刈りだけではなく、田植えも農協が有料で代行しており、稲刈りサービスを利用している農家は、田植えのサービスも利用している場合も多い様です。
稲刈りサービスを利用する3つの理由
私が、妻の実家の稲作を手伝うようになって感じているのは、田植え・稲刈り共に農協のサービスを利用してまでも、お米の耕作にこだわる農家の方が意外に多いという事です。
第1の理由は、耕作を止めてしまうと農地として一定の恩恵を受けている固定資産税の税額が上がる可能性があるからでしょう。
第2の理由として、都市部・現代っ子育ちの私には意外と思えた理由なのですが、町内の世間体から耕作を止める・手を抜く事が出来ないという事情もある様です。
第3の理由として、先祖伝来の田畑を手放すことへの抵抗感がある様です。これが一番大きな理由ではないかと思います。
ご高齢の方の中には、今でも田畑を失ってしまうのは情けない・恥ずかしいといった感情を持っておられる方もいらっしゃいます。
また、仮に、自ら耕作出来ず、家族による手伝いも期待できないとして農地を売却した場合には、売却益に対し一定の譲渡所得税の納付義務が生じます。
これに対し、農協の助けを借りながらでも耕作を続け、自分の子や孫に農地を相続させると、相続には各種控除や農地に関する猶予制度等が用意されていることから、しっかりと事前に対策を立てておくことによって生前に農地を売却するよりも経済的負担を押さえる事が出来る場合があります。
代々受け継ぐ田んぼはとっても特別なもの
こういった事情から、田植えや稲刈りで農協のサービスを利用してまでも、お米の耕作にこだわる農家の方が多いのだと思われます。
そして、こんな農家の切実な心情に付け込むことによって、最近世間を騒がせている○○建託の様な問題を内包する商法が広がってきたのでしょう。
話は大きく脱線しましたが、何はともあれ、今年も無事に稲刈りが終了しました。
何年か前は、大雨の被害で全く収穫できなかった事もありましたので、無事に収穫が終わると本当に自然の恵みに感謝する気持ちになります。
ただ、無事とはいえ、折角治りかけていた腰痛に復活されたのがショック。
デスクワークや車の運転がまた辛くなった夏の終わりです。
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鵤 直樹
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- 平成29年度稲刈り終了 - 2017-09-10