借入金返済計画表を作成する 【経営改善計画書作成-22<借入金返済計画表>】
今回は、経営改善計画の最後の部分になる借入金返済計画表のお話です。
どの金融機関にいくら返済する計画なのかを示す借入金返済計画表
リスケを依頼して、当面の間は返済を猶予してもらいますが永遠に猶予をしてもらう訳にはいきません。
そこで、返済猶予期間を過ぎた時点で「いくらお返しします」と示すのが借入金返済計画表です。
どのタイミングから返済する?
返済をするには原資が必要です。
そもそも、原資がない中返済を進めていくと会社がつぶれてしまいます。そのためにリスケ(返済猶予)をお願いしている訳ですので、返済を再スタートさせるのは返す原資ができてからです。
タイミングは、返済原資が確保できてからになります。
では、その返済原資とは何なののでしょうか?
返済原資=フリーキャッシュフロー
返済原資はフリーキャッシュフローになります。
フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローと投資キャシュフローを足したものになります。
フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー
返済の目安はフリーキャッシュフローの80%
返済原資はフリーキャッシュフローとなりますが、全額を返済に充ててしまうと将来への投資が行えなくなったり、不足事態に対応できなくなってしまいます。
獲得したキャッシュを少しづつでも手元に置いておき、財務体質の強化も図ります。
そのため、返済に充てる金額はフリーキャッシュフローの80%を目安として、金融機関と交渉を行い可能な限り低く抑えます。
基本的には、「経常黒字化3年以内」「5年(から10年)内に実質債務超過解消」「計画終了時(債務超過解消時)に借入金償還年数がおおむね10年」を達成できるように計画を作成しますので、ここでは「計画終了時(債務超過解消時)に借入金償還年数がおおむね10年」となれるくらいの返済を目指します。
詳しくは経営改善計画で必ず意識すべき3つの数値基準 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-19<数値計画-①>】をご確認ください
返済条件は一律同条件
返済に充てる金額が算定された後は、金融機関ごとにどれくらいづつ返済するかです。
しかし、ここで絶対に守る必要があることは、「一律同条件」にすることです。
一律同条件とは、ある一定の決まりに添って返済額を決めることを言います。
プロラタを用いて返済する
主に使われる返済の条件に、プロラタと呼ばれる方法があります。プロラタとは按分と言う意味です。
用いられるプロラタは2種類あり
- 残高プロラタ
- 信用プロラタ(非保全プロラタ)
です。
残高プロラタ
残高プロラタとは、返済総額を金融機関別の債権残高割合で按分して返済額を決定する方法です。
金融機関 | 債権額 | 残高プロラタ | 返済額 |
A銀行 | 350,000 | 70.0% | 70,000 |
B信用金庫 | 100,000 | 20.0% | 20,000 |
C銀行 | 50,000 | 10.0% | 10,000 |
合計 | 500,000 | 100.0% | 100,000 |
信用プロラタ(非保全プロラタ)
信用プロラタ(非保全プロラタ)とは、返済総額を金融機関別の債権残高から担保による保全額を控除した金融機関別の非保全案高割合で按分して返済額を決定する方法です。
金融機関 | 債権額 | 保全合計 | 非保全額 | 残高プロラタ | 返済額 | ||
不動産 | 保証協会 | ||||||
A銀行 | 350,000 | 100,000 | 200,000 | 300,000 | 50,000 | 50.0% | 50,000 |
B信用金庫 | 100,000 | 50,000 | 50,000 | 100,000 | 0 | 0.0% | 0 |
C銀行 | 50,000 | 0 | 50,000 | 50.0% | 50,000 | ||
合計 | 500,000 | 150,000 | 250,000 | 400,000 | 100,000 | 100.0% | 100,000 |
上記を比べていただけると、保全割合が変わることにより、各銀行への返済額が変わってくることがわかると思います。
残高プロラタではA銀行がメインバンクとして債権額も多く、返済割合も高くなっています。
しかし、信用プロラタで見るとB信用金庫は返済額がゼロとなり一番債権額が少なかったC銀行がA銀行と同額の返済を受けれることになっています。
どちらが良いときかれれば、残高プロラタでの返済です。
理由として、上記の場合だとB信用金庫は返済額がゼロになり全行の合意が難しくなる、担保評価方法は各行で考え方が様々、中小企業再生支援協議会は残高プロラタが原則である、からです。
金利は据え置きをお願いする
リスケを依頼すると、必ず金利の引き上げを要求されます。
金融機関側の立場から言えば納得ですが、経営改善計画はあくまでも企業再生を果たして、通常返済を行うことが目的です。
金利の引き上げは経営改善の足かせとなるので、原則合意しないスタンスでいきます。
どうしてもの場合は、各行一律同条件とします。
基本的にはメインバンクの意向にサブバンク以下は従う傾向になりますので、メインバンクとよく協議の上決めてください。
まとめ
経営改善計画での返済は、フリーキャッシュフローの80%を目安に、各行同一条件で返済します。
同条件とは残高プロラタによる割合での返済です。
経営改善計画の作成はこれで終了になります。
全部で22回にわたりお話をしてきましたが、実際作成をするとなるとなかなか大変な作業と思います。
しかし、企業の存続のため、金融機関任せのリスケはなるべく避けるべきです。
企業側が主体的に計画を作成してリスケ(返済猶予)を承認してもらうほうが、事業再生の確率は高まります。
【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成】シリーズ
前回 資金繰り表を作成する 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-21<資金繰り表>】
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末信 公平
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