中小企業に経営コンサルタントは必要なのか?

中小企業に経営コンサルタントは必要なのか?
今回は自身の経験も踏まえて、「そもそも中小企業に経営コンサルタントと呼ばれる人は必要なのか?」を考えてみたいと思います。
目次
中小企業にコンサルタントは必要なのか?
私は中小企業診断士として、企業支援の仕事を生業としています。
そもそも「中小企業診断士って何ですか??」と大半の方はお思いであろうと推測します。
中小企業診断士と名乗って通用するのは金融機関や同じ士業くらいで、お会いする一般の方への認知度はまだまだです。
たまに子どもから「パパは何のお仕事をしているの?」と聞かれます。
これにはいつも困ってます。「○○を作っている仕事だよ」と言える嫁がうらやましい・・・
子どもへの答えとしては「困っている社長さんを助ける仕事だよ」と言っています。非常にあいまいで具体的ではありません・・・
子どもに対してはこれでいいのですが、お会いする方には「中小企業診断士という国家資格を活かして、企業支援の仕事です。平たく言えば、経営コンサルタントです。専門は資金繰りや金融機関折衝などお金に関することです。」と説明することが多いです。長々と説明するたびに「わかりにくい仕事だなぁ」と感じます。
これで一応わかったような感じになってもらえますが、”経営コンサルタント”という響きがどうも胡散臭さを醸し出してます。
コンサルタント(consultant)とは
では経営コンサルタントとはどのような事をする人でしょうか?
辞書で調べてみると
企業経営などについて相談を受け、診断・助言・指導を行うことを職業としている専門家。「経営コンサルタント」
(出典:デジタル大辞泉(小学館))
ある分野についての経験や知識をもち,顧客の相談にのって,指導や助言を行う専門家。特に,企業の経営・管理術などについて,指導や助言をする専門家。 「経営-」
(出典:三省堂 大辞林)
ある特定分野において専門的知識と経験を有し,顧客の持込む問題に対して相談に応じたり,助言を提供したりすることを職業とする人をいう。大別して経営コンサルタントと技術コンサルタントがあり,経営全般の問題あるいは技術に関しての相談,助言を行なっている。
(出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典)
となっています。
要すると「相談を受けて、助言や指導」をする人をコンサルタントと呼ぶようです。
相談したほうが良い企業は多いと思う
では、中小企業にはコンサルタントは必要なのか?を考えて見たいと思います。
経営コンサルタントの仕事が「相談を受けて助言や指導」をすることなので、相談事がある企業や経営者は相談してみても良いことになります。
実際、この仕事を始めて改めて思ったことは「もっと早くに相談してくれれば色々な打ち手もあっただろうに・・・」という事です。
中小企業はどうしても持てる資源(リソース)が大企業に比べて少ないです。これが零細企業、個人事業主となればもっと少なくなります。
限りある人材(多くの場合は社長と少数の社員やアルバイト)、限りある資金(これまた多くの中小企業は少ない)なので、頑張って知恵を絞るしかありません。
社長や経営者の時間が無限にあれば良いのですが、一日24時間しかなく、しかも経営だけに時間を割くことはできません。
圧倒的にインプットの時間が足りていないことが多いです。(もちろん勉強熱心な経営者の方はインプットもしていますが・・・)
このような時「知っているだけで得をした」ことや「違った見方でアドバイスを受けたときに経営のヒントとなる」ことが多いです。
なので、中小企業、零細企業、個人事業主が相談する相手を持つことは良いことだと考えます。
誰に相談すればいい
では誰に相談すればいいのか?
多くの中小企業経営者の方が相談する相手として”税理士”の先生がいます。
税務に関することは初めからお金を払っても良いと考えている方も多く、税理士の先生と接点を持っています。
そして経営者にとっては唯一と言えるくらい”専門家”と呼ばれる方となります。
すると経営者の方は税理士の先生に経営の相談をしますが、「期待に応えてくれない」「全然わかっていない」と不満を持つ人も多いです。
これは、「風邪を引いたから病院の先生に診てもらおう。医者だったら病気のことはわかると思うので眼医者さんに診てもらおう」と言っているようなものです。
もちろん一般の眼科医も医師免許を持っているので風邪の症状や対処法を知っていますし、処方箋を出すことができます。
しかし、眼科医の専門は目の病気や症状のこと。
内科が専門の医師と同等の能力が求められると、ちょっと困ると思います。
なので、相談する相手は”抱えている経営課題を解決してくれる専門家”にすることが望ましいとなります。
コンサルタントにお金を払えない
中小企業には経営コンサルタントは必要と思いますが、全ての中小企業、零細企業、個人事業主がコンサルタントを雇えるものでもありません。
我々中小企業診断士の平均報酬は1日10万円だそうです。中堅のコンサルティング会社だと1か月50万円くらい、大手のコンサルファームだと1か月で数百万数千万円とします。
それだけを払うには、それなりの体力がないと無理ですよね。
なので普段は商工会議所の無料相談や中小企業庁のミラサポなどを活用すれば良いかと思います。
(ちなみに私は神戸商工会議所の外部専門家登録、中小企業庁委託事業ミラサポ経営専門家登録をしていますので、無料で相談に乗ることができます。)
そして、会社にとって困りごとが出てきた段階で専門家に相談をしてみて、必要であれば継続支援をお願いするのが良いのではないでしょうか?
ただ、相談は早い方が様々な打ち手を提案してもらえると思いますので、早め早めを心がけるほうが良いとですね。
相談して助言を受けるだけではうまくいかない
国も自治体も中小企業に相談をしてもらおうと様々な支援制度があります。
商工会議所もそうですし、よろず支援拠点などもあります。金融機関(特に地域密着の信用金庫など)も積極的の相談を受け付けています。
ハズレの人に当たらなければ、担当者の方が一生懸命相談に乗ってくれるでしょう。
しかし、無料はあくまで無料。支援はあくまで窓口でお話をするだけです。
結局のところ、助言や指導を受けても実行してみなければ効果は出ません。
残念ながら、無料相談の範囲では経営者と一緒になって課題解決に取組むには限界があります。
その時は、有料で支援を受けたほうが関わる密度が異なりますので効果は高まるでしょう。
お金がないから支援を受けれない→さらに悪化→打ち手がますます無くなる
といった悪循環に陥りやすいので、本当に一人で解決できない場合は、自身の報酬を削減や貯金を崩してでも専門家を雇った方が結局は得をします。
どんな人に頼んだ方が良いのか?
経営コンサルタントにお願いをするという事は、自社では解決できない問題を解決するためにお願いをすることになります。
なので少なくとも、「自分ではできないことを助けてくれる専門家」が必要です。
また意外と多いのが、会計が苦手なコンサルタント、です。
会計の指標を改善するのが目的でなければ問題はありませんが、最終目的が「利益を出したい」「資金繰りを楽にしたい」のであれば、会計を知っている人は必須となります。
売上を上げたいのでコンサルをお願いして、「めでたく売上が上がったのは良いが、かえって資金繰りが悪化した」となっては本末転倒です。(この意味が分からないコンサルタントにはお願いしないほうが良いですよ)
中小企業や個人事業主は限られた資金の中でやりくりをしなければなりませんので、併せて考えてくれる専門家が良いでしょう。
ただ、上記に挙げた事はあくまでもスペックの話になります。
中小企業や個人事業主の経営者にとって最も大事なことは
「この人と一緒に課題の解決に取組めるか?」
といった相性なのではないかと思います。
時には厳しいことも指摘されるかもしれません。そんな時でも、「この人の話なら聞ける」といった信頼関係は大変重要と思います。
盲目的に信じるのではなく、お互いパートナーとして意見を言い合える相手が、中小企業の経営者には良いのではないかと考えます。
まとめ
子どもも6歳になり、親の仕事に興味が出てきたようです。
その都度子供になんて答えるのが良いのか?と考えだして、「中小企業に経営コンサルタントって本当に必要なのかな?」と思ったのがきっかけです。
私自身この仕事をはじめ、関わった経営者の方から感謝される場面が多いので、「足りない部分を補う形で支援者がいるのがいいのだろう」とは思います。
特に私の専門は財務会計なので、その部分を苦手に思う経営者の方からすれば有難く思ってもらえるようです。
個人的には「支援先の企業が経営コンサルタントなどの専門家が要らなくなる状態」にすることが最終目標と考えています。
中小企業や個人事業主の経営者の方は、まずは相談相手として経営コンサルタントを利用することからはじめるのが良いと思います。
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末信 公平

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