資金繰り改善の方法は支出内容の見直しから始める

目次
支出額を売上に見合うまで圧縮させる
資金繰りが悪化する理由の大きな原因の一つとして、「売上に見合わない支出」があげられます。
リーマンショックなどで突然売上が下がるなど急激な経営環境の悪化による資金繰りの悪化や、なんだかダラダラと売上が下がっていっている場合の資金繰り悪化と二つのパターンがあります。
「ゆでガエル」って聞いたことありますか?
カエルを熱湯のなかに入れると熱くて飛び出しますが、水の中に入れて徐々に熱すると熱さに慣れ、そのままゆであがってしまうというお話です。
ありそうな話ですが、実際には熱くなる前に飛び出して逃げてしまうそうです。
このお話は、「周囲の環境変化に気づかないまま衰退してしまう企業」の例えとして使われます。
主には「経営者は周囲の環境変化を感じ取り、過去の栄光にすがりつかずに変革を起こしましょう」とわかってもらうための比喩です。
わかっちゃいるけど変えられない
売上がじりじりと下がっている状態のとき、逆に思い切ったことはできなくなるものです。
人間の心理として、過去の経験を変えるという事は相当ストレスがかかるようになっているからです。
なまじ成功体験のあるリーダーの場合、過去の成功体験を引きずりやすく、また、周囲から率直な意見を言われない立場である場合、従業員を責めて終わりと言うパターンを多く見かけます。
自分以外の責任と思っている間は、残念ながら間違いなく経営が良くなることはありません。
ただ、環境の変化はわかっているけど、心情的にどうしても変えられない気持ちも理解できなくはありません。
それほど変えるという事は、他人が言うほど簡単ではないという事です。
とは言え、収入に比べ支出が多い状態が続けば、必ずどこかで潰れてしまいます。
ですので、何らかの手を打つ必要があります。
いったい収入と支出の差がゼロになるのはいくらか計算する
まず取りかかることは、売上に見合った支出にすることです。
いつか回復するだろう、節約するのは気が縮こまって嫌だ、などという感情にはいったん蓋をして、売上に見合った支出はいくらかを計算します。
赤字の場合はゼロになるには、いくら支出を削減すればいいのかを計算します。
もし借入金の返済がある場合は、借入返済額も支出に含めて計算します。
ここでの計算は、決算書や試算表の損益計算書ではなく、キャッシュフロー計算書の考え方です。
平たく言うと、資金繰り表のことです。
最も手軽にできる収入金額の算出は、「利益+減価償却費」となります。
この、「利益+減価償却費」は現金としていくら増えるのか(減るのか)の簡易的な計算になります。
減らす費用の優先順位を決める
支出がいくら減らせれば現金の流出が止まるかがわかれば、どの支出を減らせばいいのかを考えます。
最優先に削るのは役員報酬になります。
次に交際費です。業種によっては重要な部分かもしれませんが、売上が下がっているのは交際費の効果が無いという事かもしれません。交際費を使うにしても、効果のある使い方が必要です。
その他使っていないような経費を削減します。
減らしてはいけない経費を見極める
中には減らしてはいけない経費があります。
それは、将来への投資につながる部分です。
広告費であったり、必要な教育費であったり、開発費が当たります。
効果がすぐに表れにくいものほど削減対象になりますが、将来への投資をおろそかになるとますます売上が減ることにつながります。
この、目に見えない資産を作ることが業績回復には必要となります。
ただ、これまでと同じような使い方ではなく、同じ100万円を使うのであれば、効果が高い使い方に切り替えていきます。
全ての経費にも言えますが、限りある資源をいかに有効に使うかが重要となります。
借入金の返済を止める(リスケ)
様々な支出の削減をしたけれど、まだお金が減ってしまう状況の場合、次に検討するのは借入金の返済を止めることです。
この、借入金の返済を止めること、返済を猶予してもらうことをリスケと呼びます。
よっぽどのことが無い限り、リスケには応じてもらえます。
ただし、リスケをしてしまうと新たな資金調達ができなくなります。
建設業や製造業など、原料の仕入や人件費など先にお金が必要になるような業種の場合は注意が必要です。
人件費に手を付けるのは一度だけ
ここまでしてもまだマイナスの場合は、いよいよ人件費の削減を検討します。
人件費には決して手をつけてはいけないというコンサルタントもいます。
しかし私は、一度だけなら大丈夫と考えます。
当然社員は不満に思うでしょう。辞める人もいるかもしれません。
しかし、社員にも業績不振の責任があります。
経営者が悪くて自分たちは間違っていないと思っている人も多いでしょう。
ただ、いつまでも上がらない給与、ほんの少しの賞与をもらったところで不満に思うのには変わりません。
それであれば、一回限り、早期に元に戻す条件で下げることは悪いことではありません。
多くの社員は、自らが勤めている会社の業績が回復することを望んでいます。
気を付けるポイントとして、人件費を下げるにあたり、しっかりと現状を伝え、経営者自身が自ら反省すべき点は反省をし、協力を求める姿勢で臨みます。
人件費に手を付ければ、やる気のある社員とそうでない社員が浮き彫りになります。
やる気のある社員を味方にして改革を進めていきましょう。
資金繰り改善には強制積み立てを行う
毎月支払いがあるものに対しては注意を払いやすいので、日ごろの資金繰り計画に入っていると思います。
年に1回しか払わないものや突発的な支出への対応はあらかじめ積み立てを行っておきます。
具体的には、毎月一定額を決済口座以外に移します。
同一口座の場合は使いやすい状況と言えますので、強制的に別口座に移しておきます。
ただ、通常でもギリギリまで切り詰めているのにさらに積み立てを行うのはなかなか大変です。
融資をいつでも受けれる状態であればまだいいですが、業績が下降している会社に対しては、いつ態度を変えられるかわかりません。
その為にも、あらかじめ積み立てをすることが必要です。
積立が困難な場合は、経営陣の報酬を一時的に未払にしてでも貯めておきます。
無事に支払いが済んで残ったときに、経営陣へ支払うことで対応します。
手元に一定のお金があると、心理的余裕も生まれ、経営の打ち手も広がります。
その為にも、強制的な積み立ては有効です。
まとめ
現状を認め変えていくのは大変困難です。
しかし現在は、変えていかなくては生き残りもままならない環境です。
その一歩として、収支を合わせ、強制的に積み立てを行い基盤を強化させます。
タネ銭があれば打ち手は広がります。
コツコツと地味なことですが、やるかやらないかで大きな差がつきます。
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末信 公平

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