利益の出し方は2つしかない 【経営改善計画書作成-15<課題の解決-②>】

前回は課題の解決をするのに、「ヒト」「モノ」「カネ」の視点から整理することをお話しました。
今回は「カネ」の部分をもう少し掘り下げ「売上」「費用」の面から考えます。
利益を出すには「売上」を増やすか「費用」を減らすか
リスケ(返済猶予)の目的は、資金繰りを改善させるためです。
「ヒト」や「モノ」の課題解決も、最終的には「カネ」の課題を解決することにつなげるためです。
「カネ」の課題を解決するには基本的に2つしかありません。
「売上」を増やすか「費用」を減らすか
のどちらかです。
コストを削減する
リスケのための経営改善計画を作成するのに、絶対に外してはならない項目がコスト削減です。
「これまでかなりコスト削減を実施してたからこれ以上は無理」と思っても、必ずひねり出す必要があります。
なぜならば、金融機関はコスト削減を重視します。場合によっては、そこしか見ない金融機関もあるくらいです。
理由は、確実な施策として捉えられるからです。
売上増加の施策は、あくまでも予想にすぎません。信用してもらうには、しっかりとした裏付け理由が必要となります。
逆にコスト削減策は、やれば結果が出やすいので好まれます。
主なコスト削減策
コスト削減策を考えるうえで、いくつかのパターンがあります。
- 仕入(原価)【調達先の見直し、発注量の見直し、在庫の削減、歩留りの改善、代替品の検討 など】
- 人件費【役員報酬カット、残業代削減、賞与見直し など】
- 経費【倉庫料の見直し、運搬費の見直し、家賃の見直し、保険の見直し、交際接待費の見直し、水道光熱費の見直し、消耗品などの見直し など】
コスト削減策は、単に購入単価を引き下げる交渉だけでなく、取引先の変更や自社の運用の見直しなどいろいろな角度から検討します。
上記の削減案のうち、必ず行う必要があるのは【役員報酬のカット】です。
これは、経営者責任を明確にするアピールにもなり、リスケを了承してもらいやすくなります。また、従業員に対して経営改善の本気度を伝えるためにも必須です。
ですので、経営者が公私混合で使っているような経費を、今後一切使わないようにする必要があります。
コスト削減の際の注意点
コスト削減をする際に注意することは、従業員の意識(やる気)を必要以上に削がないようにすることです。
多くの経営者は上からの一声で削減策を実行させます。
経営者は当事者なので危機意識もあり、コストの削減は当然と捉えているでしょうが、従業員側は当然と捉えない人も中にはいます。
むしろ、これまで経営が苦しい状況を過ごしてきた分、不満もたまっていると考えてください。
一方的にコピー1枚にもあれこれ口を出されると、それが正しくても素直に聞けないものです。
大事なことは、現状を会社全体で共有し、経営者自ら率先して改善策を行い、ここを乗り越えると将来が明るくなり、必ず見返りがあることを示すことです。
そして、現場レベルの意見も積極的に耳を傾け、主体的に取り組んでもらうことが必要です。
収入を上げる
コスト削減策一辺倒では必要以上に縮小してしまいかねず、将来の経営の安定にも影響を及ぼしかねません。
売上を上げる施策と費用を減らす施策のバランスをとり、経営改善計画を作成します。
中小企業の基本戦略は「強み」と「機会」を活かす
売上の向上策は基本的に強みと機会を活かします。
- 強み弱み機会脅威・SWOT分析 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-6<現状把握-③>】
- 「強み」の見つけ方・SWOT分析 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-7<現状把握-④>】
資金の限られた中では、今ある強みと機会を活かすことが最も効率的と考えます。
セオリーは差別化集中
強みと機会を活かして戦略を考えますが、中小企業のセオリーとして差別化集中戦略があります。
これは、商圏内で競合との違いを見出して顧客に訴求することで選んでもらい、そこに限りある経営資源を集中させる戦略です。
世間では差別化差別化と言われていますが、違いがあれば何でもいいわけではありません。
顧客に選んでもらうことが大事です。
その際には自社目線で違いを考えるより、顧客目線で自社や競合がカバーできていない顧客の困りごとを解決できるのかを考えたほうが良いです。
それがおのずと差別化と呼ばれるものになります。
売上=客単価×(既存客+新規客)
売上の構成を分解すれば、売上=客単価×(既存客+新規客)となります。
売上を上げるには、単価を上げるか客数を増やすかしかありません。また、客数を増やすのは、これまでのお客さんにリピート利用してもらうか新規のお客さんを開拓するかのどちらかです。
シンプルな式ですが、意外とこのことを理解されていない方も多いです。
分解することで、具体的な改善策を考えやすくなります。
まとめ
利益を出すには「売上」を増やすか「費用」を減らすかのどちらかしかありません。
リスケの場合はコスト削減策をしっかり行う必要がありますが、やり方を間違ってしまっては事業の存続自体を揺るがしかねません。
売上を上げる施策とバランスをとることが大事です。
売上の施策は将来のことなので、実現性があることを理解してもらえる裏付けが重要となります。
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【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成】シリーズ
次回 抑えておきたいマーケティングの基礎 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-16<課題の解決-③>】
前回 経営に必要な要素ごとに課題を整理する 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-14<課題の解決-①>】
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末信 公平

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