経営に必要な要素ごとに課題を整理する 【経営改善計画書作成-14<課題の解決-①>】

前回、前々回で行った窮境原因とそれに対する課題の設定をもとに、課題の解決策を考えていきます。
目次
課題を整理して解決策を具体的に考えていく
前回行った課題の設定で、「○○する」のように目指すべき方向性はわかったと思います。
ただこの状態では「どうすればいいの?」がまだわかっていない状態です。
解決策を具体的に考えて、どのような作業が必要なのかを組織全体で認識していく必要があります。
また、この具体的施策(アクションプラン)は、経営改善計画の数字の裏付けとなります。しっかりとした具体策を考えることは計画の信頼性を高めますので、重要な作業となります。
課題を整理することで、具体的な施策のアイデアも出しやすくなります。
経営の機能を分解して考える
事業を営む上で必要な要素を整理することで、どのような考え方が必要なのかがわかります。
経営の課題を考えるうえで「ヒト」「モノ」「カネ」の切り口があります。昔からよく言われる、経営に必要な資源の分類です。(現在では「ジョウホウ」も必要な経営資源と言われいます)
「ヒト」が課題の解決策のヒント
「ヒト」=「組織」とも言え、経営を行うにあたっての基盤となります。
どんなに素晴らしい戦略があっても、お金があっても、販売先が決まっていても、特別な購買ルートがあっても、結局は「ヒト」が行います。
「ヒト」の課題の代表的な例として
- 個人の能力の開発
- 人材の確保
- 組織作り
- 意識向上
があります。
その解決策の切り口として、
- 採用活動
- 人員配置
- 報酬形態
- 評価制度
- 権限移譲
- 就業時間
が考えられます。
人事や組織の施策をどのように組み合わせて行えばよいのかを、企業ごとの理念や戦略に合せ、最適と考えれる具体的な施策を考えます。
人事組織の施策で最も重要なことは、「一貫性を持つ」ことです。ここで一貫性のないバラバラな施策を行うと組織の崩壊につながりかねないので、特に理念に沿った施策になっているか、ちぐはぐな施策の組み合わせになっていないかに注意を払います。
「モノ」が課題の解決策のヒント
「モノ」=「商品」「製品」「サービス」と考え、顧客に提供する自社の価値に相当します。
当然ながら、顧客に提供する価値が低ければ、経営改善もままなりません。
「モノ」の課題の代表的な例として
- 品質
- 納期
- ブランド力
があります。
解決策の切り口として
- 製品開発
- 調達先
- 製造プロセス
- 物流
- 狭義の広報活動
- マーケティング
などが考えられます。
「商品」「製品」「サービス」の提供価値を高めるため、仕組みづくりや組織力なども関係することになります。
ここで重要なことは、単発で終わらず次につながる仕組みづくりができるかになります。
特に長期的視点で解決する施策の場合は、この仕組みづくりが重要となりますので、具体的な解決立案の段階で先のことまで考える必要があります。
「カネ」が課題の解決策のヒント
「カネ」=資金繰りと考え、この課題の解決が最重要ポイントとなります。
上記の「ヒト」や「モノ」の課題を解決して改善させていきますが、短期的にはテクニカルな施策で乗り越えます。
その短期的な施策こそ、経営改善計画を策定して「リスケ(返済猶予)」に同意をしてもらい、資金繰りを楽にする方法です。
「カネ」の代表的な課題として
- 売上の増加
- コスト削減
- 売掛金の回収
- 資金調達
- 資金の見える化
などがあります。
解決策は、短期的な取り組みと長期的な取り組みを組み合わせ、「ヒト」や「モノ」の課題を解決しながら、最終的に「カネ」の課題の解決につなげます。
「カネ」の部分はすぐにでも実行して効果が出るコスト削減などの施策もあるので、経営改善計画の具体的な施策として記載しやすいです。
注意点としては、行き過ぎたコスト削減策は組織力の低下につながるので、どこまで突っ込んでやるのか、その後の経営に支障はきたさないのかを判断する必要があります。
金融機関にリスケ(返済猶予)を丸投げしてはいけない
経営改善計画はなぜ自社主導で策定する必要があるのか?
自社のことなので自社で策定することは当然なのですが、金融機関に丸投げをするデメリットが大きいからです。
金融機関は具体的な実効性ある施策として「コスト削減」を好みます。いや、「コスト削減案」しか出せないと言ってもいいくらいです。
なので金融機関にリスケの依頼を丸投げした場合、施策は「コスト削減」案で埋め尽くされます。
忙しくて時間もなく、会社の事情を良く知っているわけでもなく、ましてや喜ばしくない依頼です。
そのような中で出される改善計画は、自社にとって有用なものになる可能性は低いです。
そのような計画は未達になるか、自社の運営に支障をきたします。
ですので、自社で作成する必要があるのです。
まとめ
経営の課題を考えるうえで「ヒト」「モノ」「カネ」を分解して分けると、アイデアも出しやすくなります。
実際には、一つの施策がいろいろなところに影響を及ぼし、最終的に「カネ」につながります。
各企業に合った一貫性を持った具体的な施策で、有用な経営改善計画を作成し、実行することで経営の改善が図れます。
決して金融機関にリスケを丸投げするのではなく、自社で取り組む方が望ましい結果になりやすいと考えます。
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次回 利益の出し方は2つしかない 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-15<課題の解決-②>】
前回 問題点と課題の設定 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-13<課題の設定>】
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末信 公平

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