期間別・固変分解・セグメント別でわかりやすくする 【経営改善計画書作成-5<現状把握-②>】

目次
損益計算書を分解してわかりやすくする
税務署に提出する損益計算書は、いわゆる財務会計です。
このままではわかりにくい部分もあるので、会社の問題点や課題を明らかにするため、分解してわかりやすくしてあげます。
経営のために使う会計を管理会計と言います。
月別の試算表から推測する
決算は通常年に1回です。そのため、決算書は各月がどのように推移しているのかを見ることはできません。
自社の事業が、どれだけ季節性に左右されているのかをみるためには月別の試算表を確認します。特に、季節により売上が変動する業種の場合は特に注意して数字の変化を追いかけます。
この作業も、感覚で認識していることを数字を通して客観的に把握するために行います。
現在の会計ソフトは、月別の試算表を出力することができるので、わざわざ作成する必要はないと思います。
毎月の売上や経費、利益を数年分比べるだけで、伸びた理由や減った理由を推測する手掛かりとします。
費用を固定費と変動費に分ける
費用は、売上に比例して変化する変動費と、売上に関係なく金額が一定の固定費に分けられます。
通常の損益計算書はこれが一緒になっていますので、わかりやすくするために分けます。
また、この作業は損益分岐点比率の算出や、数値計画策定に必要となりますので、必須項目と言えます。
図1 変動費・固定費の構成イメージ
変動費と固定費の分け方は色々ありますが、勘定科目によって分ける費目別精査法が一般的です。
例として、変動費は材料費、商品売上の原価、外注費など、固定費は人件費、地代家賃などです。
物流費や送料、水道光熱費などは会社によって、変動費としてみるか固定費としてみるかを分けます。その際、全額をどちらかとみなすか、一定の割合だけみなすかなどは会社の状況によって変化させます。
あまり堅苦しく考えず、徐々に制度を高めていければいいくらいの気持ちで、ざっくりでもいいので計算をしてみるとの方が大事です。
セグメント別に分ける
会社に複数の事業所がある、主要な取扱商品が複数ある、販売先が複数ある、さまざまな種類の事業を営んでいるなど、同じようなカテゴリーに分けられる場合はセグメント別に分けて、損益計算書を作成します。もし貸借対照表もセグメント別に分けることができれば、より、深く分析が可能です。
例としては、地域別・顧客別・商品別・・・などとなります。
また、セグメント別は先ほどの変動費と固定費を分けて分析をすると、より事業の実態がつかみやすくなります。
例えば、商品別に作成した損益計算書では赤字の商品があったとしても、変動費と固定費を分解して見れば、限界利益段階では黒字と言うことも多くあります。この場合、経営資源を注力すべきか、商品の販売を止めるべきかなどの判断に違いが出てきます。
セグメント別は、様々な角度から見ることにより、これまで気づかなかったことを発見できることもあります。
例 商品別損益
A商品 | B商品 | C商品 | 合計 | |
売上高 | 1,000 | 800 | 500 | 2,300 |
変動費 | 450 | 400 | 300 | 1,150 |
限界利益 | 550 | 400 | 200 | 1,150 |
共通固定費 | 430 | 350 | 220 | 1,000 |
営業利益 | 120 | 50 | △20 | 150 |
上記の例では、C商品は営業利益がマイナスです。
しかし、限界利益段階では150の黒字なので、もしC商品の販売をやめた場合、C商品が負担をしていてた共通固定費220をA商品とB商品が負担することになります。
すると、会社全体として、全社の営業利益150-C商品の貢献利益200=△50ということになり、赤字に転落です。
よって、C商品の販売をやめてしまうのは得策ではないことがわかります。
このように、セグメント別でなおかつ変動費と固定費にわけて計算をすると、より分かりやすくなります。
まとめ
月別や変動費固定費、セグメント別など様々な角度から見ることにより、企業の実態をより詳しく把握することができます。
それにより、より問題点が把握しやすくなり、解決策の糸口もつかみやすくなります。
また、様々な角度から説明することは、金融機関へ納得性の高い資料となります。
いきなりすべての資料を作成するとなると大変ですので、一つ一つ問題点の仮説が浮かぶたびに、裏付けの資料として作成していってもかまいません。
【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成】シリーズ
次回 強み弱み機会脅威・SWOT分析 【経営改善計画書作成-6<現状把握-③>】
前回 財務分析から推測する現状 【経営改善計画書作成-4<現状把握-①>】
まとめ
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末信 公平

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