経営実績を客観的にみる成長性・生産性・返済能力 【経営改善計画書作成-3<財務分析-②>】

目次
経営改善のため、財務分析でモニタリング
前回の「経営改善計画書作成-2<財務分析-1>」続きで、今回は残り二つのグループとその他の指標をとりあげます。
基本の3つのグループは基本の財務指標「安全性」「成長性」「効率性」でした。
3つ切り口で現状を分析するだけでも十分ですが、せっかくなので、もう少し掘り下げていきましょう。
経営の実績をもう少し詳しく見れる「成長性」「生産性」
貸借対照表と損益計算書を並べてもなんとなくはわかりますが、客観的に知るため数値化します。
成長性
四つ目が成長性を見る指標です。
ある時点だけ良くなっていても、それでいいわけではありません。続けてできているのかを見るために成長性の分析を行います。3~5年に並べて分析を行います。
代表的な指標を3つ示します。
1.売上高成長率
=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100(%)
収益の源泉である売上の伸びが、前年に比べてどれくらい伸びているのか(減っているのか)を見るための指標です。
数値が高いほど、成長性が高いとされています。
2.経常利益成長率
=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100(%)
企業活動の成果の基本である経常利益の伸びが、前年に比べてどれくらい伸びているのか(減っているのか)を見るための指標です。
数値が高いほど、成長性が高いとされています。
3.自己資本増加率
=(当期自己資本-前期自己資本)÷前期自己資本×100(%)
企業の成長のうち、自室的な充実を示す自己資本の伸びが、前年に比べてどれくらい伸びているのか(減っているのか)を見るための指標です。
数値が高いほど、成長性が高いとされています。
その他にも、限界利益増加率や総資産増加率、人件費増加率など経営に合わせて指標を選びます。
生産性
五つ目が生産性を見る指標です。
売上や利益が上がっても、効率的に伸びているのかを判断する指標です。
付加価値
=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課
生産性を見るにあたり、付加価値と言う概念があります。付加価値とは、企業が生み出した価値のことをいいます
1.労働生産性
=付加価値÷期首・期末平均従業員数
従業員一人当たりの付加価値を算出することで、生産性が伸びているかを見る指標です。
数値が高いほど、成長性が高いとされています。
※労働生産性
=労働装備率×固定資産回転率×売上高付加価値率
=(固定資産÷期首・期末平均従業員数)×(売上高÷固定資産)×(付加価値÷売上高)
=(固定資産×売上高×付加価値)÷(期首・期末平均従業員数×固定資産×売上高)
と分解できます。どの数値を上げたり下げたりするかを考えて施策を行うことで、生産性を高めるヒントになります。
2.一人当たり人件費
=人件費合計÷期首・期末平均従業員数
従業員一人当たりの人件費を算出することで、客観的に労働投入コストを考える手掛かりにします。
数値が高いほど、一人当たりの人件費はかかっているということです。先ほど算出した労働生産性と比べ、期待に見合った付加価値が創造できているか確認できます。
その他にも、一人当たりの売上や限界利益などを算出することで、生産性が上がっているのか下がっているのかを客観的に知ることができます。
金融機関が利用する指標
銀行や信用金庫などの金融機関も、財務資料を基に財務分析を行います。
金融機関は「貸し手」なので、「貸し手」目線での財務分析が含まれます。
融資やリスケの交渉を行う際に頭に入れておくとよいでしょう。
安全性
1.ギアリング比率
=他人資本÷自己資本×100(%)
他人資本とは、返済義務のあるお金のことを言います。返済義務のある他人資本が、どれだけ返済義務のない自己資本でカバーされているのかをみる指標です。
数値が低いほど、安全性が高いとみなされます。
返済能力
1.債務償還年数
=有利子負債÷営業キャッシュフロー(年)
有利子負債を返済するのに、単純に何年かかるかを表す指標です。
数値が低いほど、返済能力が高いとみなされます。
2.インタレスト・カバレッジ・レシオ
=(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息割引料(倍)
営業利益が支払利息の何倍かを示す指標です。
数値が低いほど、返済能力が高いとみなされます。
3.償却前営業利益率
=(営業利益+減価償却費)÷売上高×100(%)
企業の収益力を図る指標として償却前の営業利益率があります。
数値が高いほど収益力が高いので、返済能力が高いとみなされます。
まとめ
「成長性」と「生産性」、金融機関が利用する指標をあげました。
財務分析は様々な角度から見ることにより、客観的にその企業の能力を把握しようとするものです。
施策を行うにあたり、どの指標がどのように変化するのかを考えながら経営改善計画書を作成することができれば、金融機関への納得度を高めることができます。
【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成】シリーズ
次回 財務分析から推測する現状 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-4<現状把握-①>】
前回 財務分析はまず、安全性・収益性・効率性でみる 【リスケ(返済猶予)のための経営改善計画書作成-2<財務分析-①>】
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末信 公平

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