財務分析はまず、安全性・収益性・効率性でみる 【経営改善計画書作成-2<財務分析-①>】

目次
経営改善計画書作成には、財務分析は避けれない
経営改善計画書を作成するにあたり、まず一つの壁にぶつかると思います。
それは財務分析による自社の客観的な把握です。
ちょっとインターネットを調べただけでもたくさんの指標が出てきたり、顧問の税理士さんが資料を出してくれるけど見方がわからなかったり。
しかし、これも一つ一つ分解して考えれば「なんだ、そんなことか」と思うことです。
また、計算には複雑なことをすると思われるかもしれませんが、基本的には、足し算・引き算・掛け算・割り算でできます。
財務諸表の貸借対照表、損益計算書を用いて計算をします。
財務分析はスピードメーターのようなもの
財務分析は、自動車や飛行機の計器類にたとえられます。
車を運転していても、感覚と実際の数値が離れていれば事故を起こしてしまう可能性があります。
また、エンジンの回転計をみて異常がないかを確かめることで、車に不具合がないかなどがわかります。
財務分析はそれと同じで、経営を行う上で、客観的に現在の状況を教えてくれる計器のようなものです。
財務分析の基本3つの切り口「安全性」「成長性」「効率性」
財務分析を行うにあたり、いろいろな指標が使われます。
その様々な指標も、基本の3つのグループと補足の2つのグループ、合計5つに分類されます。
それでは、基本の3つのグループと代表的な指標を紹介いたします。
安全性
一つ目が安全性を見る指標です。
資産と負債のバランス等の財務構造から、経営の安全性をみる指標となります。
代表的な指標を3つあげます。
1.自己資本比率
=自己資本÷総資本×100(%)
総資本に占める自己資本の割合を見る指標です。返済の必要がない自己資本が大きいほど安全性が高いとされます。
数値が高いほど、安全性が高いとされます。
2.流動比率
=流動資産÷流動負債×100(%)
短期的な支払い能力を判断する指標です。短期に支払うべき流動負債を短期的に現金化できる流動資産で、どの程度まかなえているのかを見ます。
数値が高いほど、安全性が高いとされます。
3.固定比率
=固定資産÷自己資本
長期的な投資に対しての安全性を判断する指標です。建物や機械など、すぐには現金化できない固定資産をどれだけ返済の必要がない自己資本で、どの程度まかなえているのかを見ます。
数値が低いほど、安全性が高いとされます。
収益性
二つ目は収益性を見る指標です。
企業が利益を生み出す力をみる指標となります。
こちらも代表的な指標を3つあげます。
1.売上高経常利益率
=経常利益÷売上高×100(%)
企業の稼ぐ力を見る指標です。企業が毎年行っている業務の利益が、売上に対してどれだけの割合だったのかを見ます。
数値が高いほど、収益性が高いとされます。
2.総資本経常利益率
=経常利益÷期首・期末平均総資本×100(%)
企業の稼いだ利益と使った資本を比べる指標です。企業が毎年行っている業務の利益が、企業活動に使われている資本に対してどれだけの割合だったのかを見ます。
収益性と同時に、効率性も併せてみる指標です。
数値が高いほど、収益性・効率性が高いとされます。
3.損益分岐点比率
=損益分岐点売上高÷売上高×100(%)
企業の稼いだ利益がどれだけ良かったのかを見る指標です。経常利益がプラスマイナス0になる売上が、実際の売上に比べてどれだけの割合だったのかを見ます。
収益性と当時に、安全性にもかかる指標です。
数値が低いほど、収益性が高いとされます。
なお、1-損益分岐点比率=安全余裕率
と呼ばれる指標となり、経常利益がマイナスになる売上からどれだけ離れているか、余裕があるかをみます。
効率性
三つ目は効率性をみる指標です。
企業が保有している資産を効率的に経営できているかをみる指標となります。
こちらも代表的な指標を3つあげます。
1.総資本回転率
=売上高÷期首・期末平均総資本(回)
企業の総資本を効率的に使えたかを見る指標です。企業が持っているすべての資産をつかってどれだけ一年間に売れたのかを見ます。
数値が高いほど、効率が良いとされます。
2.棚卸資産回転率
=売上高÷期首・期末平均棚卸資産(回)
適正な在庫で売上を計上できたかを見る指標です。棚卸資産を有効に活用して売り上げを計上できたのかを見ます。
数値が高いほど、効率が良いとされます。
3.仕入債務回転期間対売上債権回転期間
仕入債務回転期間=365日÷(仕入高÷期首・期末平均仕入債務) 対 売上債権回転期間=365日÷(売上高÷期首・期末平均売上債権)
仕入に関する支払の日数と売上に関する回収の日数を比べてみる指標です。入金と支払いのバランスをみて、効率よくお金を回せているのかを見ます。
仕入債務回転期間は長い方が、売上債権回転期間は短い方が良いとされます。
まとめ
基本の財務指標「安全性」「成長性」「効率性」をとりあげました。
財務指標は同業他社や自社の過去と比べて分析を行い、施策がうまくいっているのかを数値から確認したり、浮き彫りになった課題を解決するためにどのような施策をするのかに使います。
進捗状況や達成度を確認するために、上手に指標を使うことで経営の質が向上します。
このほかにも様々な指標がありますが、基本的な指標だけでも問題ありません。
細部に入り込めばキリがありませんので、客観的な目安として使われるだけでも十分と考えます。
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末信 公平

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